“常に「人の役に立つ」を考えビジネスの生産性向上へ ”

ゾーホージャパン株式会社
代表取締役社長
迫洋一郎

インタビュー: 2014/05/30

高校卒業後、日本鋼管株式会社(NKK・現JFEホールディングス株式会社)に入社。その後、産業技術短期大学情報処理工学科を卒業。技術、コンサルティング、営業とさまざまな職種で経験を積み、新規事業の立ち上げや事業再生にも携わる。米国で設立されたZOHO Corporationの日本法人立ち上げに参画し、2001年ゾーホージャパン株式会社を設立。2011年に代表取締役に就任。

生年月日:
1958年
出身:
鹿児島県
出身校:
産業技術短期大学(旧:鉄鋼短期大学)

- 自然が豊かなところで幼少期を過ごされたのですね。

鹿児島の田舎で生まれ、自然の中で毎日走り回っていました。今のようにテレビゲームなどもありませんでしたから、山で陣地を作ったり、果物をとってきて仲間と分け合ったり、そんな子ども時代でした。小さいときから負けず嫌いの性格で、「仲間の中で一番になりたい」と思っていましたが、ある日、小学校の先生が日本地図を示しながら「鹿児島で一番になったからといって天狗になってはいけない」と言ったのです。「井の中の蛙大海を知らず」という言葉をそのとき覚えました。

- ゾーホージャパン立ち上げに参画されたきっかけは?

当社は1996年に米国で設立され、現在南インド・チェンナイに本社機能を持つZOHO Corporationの日本法人です。前職では、そのZOHO Corporationのサービスを取り扱う仕事をしていたのですが、日本法人を設立するときに本社から声がかかり、立ち上げに参画することになったわけです。私はそれまでも、新規事業などのさまざまなスタートアップに携わってきました。ゾーホージャパンの設立当時も、実は他に2社の立ち上げに関わっていたのです。自分のアイディアをビジネスとして形にできるというのは非常に面白かったですし、すべてを任せてもらえるやりがいもありました。

- 社長就任の際はどのような思いがあったのですか?

米国本社から任命を受けて社長に着任した頃は、業績が低迷していて正直、社内もあまり活気がなく、ネガティブ思考や他責のムードが漂っているような状態でした。スタッフも、ビジネスでの勝負の経験が圧倒的に不足していて、なかなか自分から仕事を組み立てることができなかったのです。そんな中、社長として再編を任されたわけですが、私には「必ず成し遂げる」という強い思いがありました。なぜなら、経験こそ不足しているものの、一人ひとりのスタッフは皆心優しく優秀だったからです。自ら仕事を組み立てられるような環境を与え、意識改革さえできれば、経験を積みながら化学反応を起こす可能性は十分にあると思いました。それから3年が経ち、見事V字回復。このV字回復はスタッフみんなで成し遂げた成果で、あの時の私の判断は間違っていなかったと強く感じています。

- 企業理念について教えてください

「人の役に立ち、人と喜びを分かち合う」という理念のもと、大切にすべき行動規範を掲げています。この行動規範とは、「1.感謝の心を持つ、2.正直さを大切にする、3.真摯に取り組む、4.前向きに取り組む、5.自発的に取り組む、6.スピーディに決断する、7.先入観にとらわれない、8.お互いに高めあう、9.さらに良いものを目指す」という9か条です。この行動規範を共感、浸透、具体化して実践することで理念の実現を目指しています。

- 社内で大切にしている文化などはありますか?

スティーブン・R・コヴィー博士によって書かれた『7つの習慣』という本がありますが、当社ではこの『7つの習慣』を研修に取り入れ、単にテクニックに走るのではなく、人格に焦点を当てた人財教育を行っています。たとえば、若いスタッフが未経験の仕事に挑戦して、自分のアイディアをきちんと提示し、他のメンバーを納得させ、お客様から良い評価をいただくことができた。そんな時、メンバー同士でお互いを誉め合う言葉が飛び交います。そういう場面を見ると本当に嬉しいですね。私は「ありがとう」という言葉がとても好きです。もう一つ、座右の銘としているのが「敬天愛人」。「天を敬い人を愛する」という、西郷隆盛の言葉です。全体の幸せのために、今自分ができることは何なのかを常に考えるようにしています。

- 失敗談があれば教えてください

実は、これといって大きな失敗は経験していません。これは普段の自分の考え方が、失敗を未然に防いでいるからかもしれません。「上司や先生、先輩など、いろいろなことを教えてくれる周りの人が常に正しいことを言うとは限らない」という考え方なのですが、言われたことを一つ一つ自分なりに理解し、それが正しいと納得できれば従い、自分の考えと違うところがあれば相手に伝える。課題や問題があったときは自分の中で3つの解決案を用意し、その中でベストと思われる案を理由とともに上司に説明し、判断を仰ぐ。そういうやり方で仕事を進めてきたことが、失敗の回避に繋がったのではないかと考えています。この「3つの解を用意する」というやり方は、スタッフにもよく話をしていますね。

- 今後の事業展開についてはどのようにお考えですか?

当社の製品やクラウドサービスを通じて、より多くのスタートアップ企業、中小・中堅企業のIT化促進に貢献すること。そして、日本全体を元気にしていきたいと思っています。また現在は、コストパフォーマンスの高さを強みとし、ネットワーク管理開発ツール「WebNMS」、IT運用管理製品「Manage Engine」、業務改善と生産性向上を支援するクラウドサービス「Zoho」の3つの製品事業を展開していますが、今後は日本独自の製品を生み出していきたいという願望もあります。そのため、社内ベンチャー制度をスタートさせ、「こんなことをやっていきたい」という声の実現に向けて動き出しています。スタッフが働きやすい環境にするために必要なことも私たちのビジネスの一つだと思っているので、ITの枠にとらわれずに自由に発想していきたいですね。

- 起業を志す人へのメッセージをお願いします

今感じているのは「人生はずっと勉強だ」ということ。そして「チャンスは自分で捕まえに行くものだ」ということです。私は経済的な事情で大学に進学することができず、高校卒業後、社会人生活をスタートさせました。しかしその中で留学制度というチャンスをいただき、短期大学に進学して勉強したことにより、総合職に転換する道が開かれたのです。それからも、技術、コンサル、営業、新規事業立上げ、事業再生、事業撤退と、さまざまな経験を積んできました。このような多様なチャレンジの中で自らを成長させることができましたし、その結果とても多くのものを得ることができました。夢や理想を何も無いところから形を作っていくことは大変な苦労を伴います。しかしその分、理想が形になる喜びは非常に大きい。覚悟さえあれば、夢や理想は実現できます。ポジティブに覚悟を持って取り組んでください。きっと素敵な未来に繋げることができるはずです。

他の経営者インタビュー