“新たな流通の仕組みを構築しBtoBのインフラ創造を目指す”

株式会社ラクーン
代表取締役社長
小方功

インタビュー: 2014/06/13

大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社を経て、1993年に個人事業主としてラクーントレイドサービスを創業。その後、1995年有限会社ラクーントレイドサービス設立。1996年に株式会社ラクーンに組織変更し、代表取締役社長に就任。メーカーと小売店の流通の効率化を実現し、今までにない企業間取引のインフラ創造を目指す。

生年月日:
1963年
出身:
北海道
出身校:
北海道大学

- どんな子供時代を過ごされたのでしょう?

一般的なサラリーマン家庭で育った、いたって普通の人間です(笑)。強烈なリーダーシップを発揮するタイプではなく、何か新しいことをする場合は、その理由や結果を詳しく説明するようなタイプ。でもそれが今、経営者としてプラスに働いている面がありますね。今、経営者に求められているのは「黙って俺についてこい!」という強引さではなく、必然性と理解で人を引っ張る力だと思っているので。起業したいという思いは子どもの頃から持っていました。親戚の半分が公務員、もう半分が経営者だったんですが、正月などで一堂に集まると両者の差が如実に表れ、経営者のおじ達の社交性や遊び心、精神的な若さに強く惹かれましたね。「あのおじさんのように、多少のリスクはあっても人間として魅力的に生きたい」という憧れがありました。

- 起業に至るまでの経緯をお聞かせください

本当は大学を卒業してすぐにでも起業したかったのですが、両親を安心させたいという思いもあり、ひとまずはコンサルティング会社に就職しました。入ってみるととても良い会社で、素晴らしい先輩も多かったのですが、やはり起業への思いは抑えられず、4年半で退社しました。今から約30年前のことです。その当時、起業とは非常にリスキーなことだと考えられていましたが、私の考えは真逆でした。大企業に勤めていれば安心だとか、資格を持っていれば安泰だなんてことはこの先ありえない。何より大切なのは、資格や組織に守られなくても自分一人で生きていくことができる能力をできるだけ若いうちに手に入れることだと。自分が持って生まれた力の全部を確かめてみたい、と強く思ったんです。

- その後、中国に留学されたとか?

起業するにあたり、私は2つの面において非常に悩みました。1つは「何をやるか」といういわゆるビジネスモデルについて。もう1つは、自分に経営者としての哲学が備わっていないという点についてです。この2点を曖昧にしたまま事業をスタートしても必ず失敗するだろうと思いました。退社と同時に留学を決めたのは、サラリーマンから経営者となるまでに自問自答をする時間が必要だと思ったからです。

- ご苦労された経験がございますか?

創業してはじめの3年くらいは本当にひどい状況でした。20年前のことなので、もう時効だと思って話しますが(笑)。個人事業主として事業をスタートさせ、中国から持ち帰った健康食品を通販で売っていた頃の話です。宣伝するにしても新聞折込や雑誌広告は資金的に無理だったので、チラシを作ってポスティングしたのですが全く注文が来ません。そのうちに用意した資金も底を尽きかけ、追いつめられてギリギリの状況でとった方法が、すでにポストに配達されている新聞にチラシを挟み込むこと。ポスティングチラシだから信頼性がないのかもしれない。それなら折込チラシ風に見せようと考えたんです。そうしたら初めて注文の電話がかかってきました。本来やってはいけないことだったと思っていますが、あれがなければ私は事業を畳んでいたでしょう。

- 業績が上向きになるきっかけは何かあったのですか?

日本の流通を改善する仕組みづくりのために、はじめは電話、そしてFAX、インターネットと、テクノロジーの進化とともにサービスも多様化させていきました。ずっと自問自答を繰り返してきた「ビジネスモデル」「経営者としての哲学」という2つの課題にようやく答えが見つかったのが、創業から7年後の2000年の時。そこで初めて社員を雇用し、会社としてのステージが大きく変わりました。当時入社したスタッフの多くは今でも戦力として活躍してくれていますが、彼らとの出会いがなければ現在の成長はなかったですね。当社にとって、その2000年の節目は第2創業期ともよべるものです。

- 会社の中で大切にしている文化はありますか?

かつて、お金・地位・名誉の3種類に大別できた成功の定義は、現在は個人によって非常に多様化しています。多様な価値観を持つ人たちが自由闊達に働くには、フラットな組織作りをしていかなければならない。そのために必要な経営者の役割について、私は「キャンプの言いだしっぺ」という言い方をしています。私がやるのは、「キャンプに行こう」という声かけをすることだけ。そうすれば「お勧めの場所を知っています」「料理が得意です」などと、仲間がさまざまなものを持ち寄ってくれるはずです。人間にはそれぞれ持って生まれた才能や適性があります。大切なのは、役割を決めて点数や順位をつけることではなく、それぞれが自分の得意なものを自然体で持ち寄ることができる組織を作っていくことなのです。

- 今後の事業展開についてはどのようにお考えでしょうか?

企業活動を効率化し、必要とされるものを提供し続けるというのが私たちの目指す理念です。当社では、現在B to Bの4つの事業を展開していますが、その全てが世界初のサービス。私たちにしかできないこと、私たちだからこそできることにこだわった結果、そうなったということですね。特に創業当時からのメンバーはeコマースの専門家です。彼らの提案を“のれん分け”のような形で一つずつ事業化を進め、ゆくゆくは資本も分けていく予定です。

- 仕事の上で大切にしている考え方はありますか?

「楽観せず悲観せず」ということを常に意識しています。集団心理に流されることなく、現実を客観的かつ冷静に見るということですね。物事に一喜一憂せず、常に同じスタンスで。状況が良いときほど慎重で謙虚に、悪いときでもポジティブに明るく。事業においてもマネジメントにおいても肝に銘じている言葉です。

- スタッフへの思いをお聞かせください

私は起業を決意した時、「自分一人で生きていく力を身につけたい」と考えていましたが、社員にも同じように考えてほしいと望んでいます。必要なのは、自分自身の課題を乗り越えるため、どう学びどう動くか。私が与えることができるのは、安定や安心よりも経験とノウハウです。たとえば、私は意思決定のプロセスをできるだけ社員たちにも見せるようにしています。そこで共に思考することが、いつか自分も事業を興したいと思った時に知識や知恵となって必ず役に立つはずだからです。もちろん、実際に起業しろと言っているわけではありません。万が一、会社がなくなってしまったとしても一人で食べていけるだけの能力を当社で身につけてもらいたい。お金でも組織でも、形あるものはいつか壊れるかもしれません。ですが、頭と心の中に蓄積した財産は誰にも奪うことができないのです。

- 起業を志す人へのメッセージをお願いします

これは起業に限った話ではありませんが、「働くって何だろう」ということを一度突き詰めて考えてみるべきだと思います。1度しかない一生の大半の時間を費やす「仕事」というものを、人生のど真ん中に位置付けて楽しむ。そういう生き方に挑戦していってほしいと思います。有名になりたい、お金が欲しいという理由だけで起業しても人はついてきません。誰かの真似ではない、自分でなければできないことに没頭し、人生を楽しんでほしいです。

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