“「不用衣類のリメイク」から循環型社会の創造を目指す”

一般社団法人日本リ・ファッション協会
代表理事
鈴木純子

インタビュー: 2014/07/25

起業家の祖父の影響を受け、16歳にして起業を決意。専門学校で財務・経営を学んだのち、コンピューター関連職の経験を経て1996年にIT系企業、株式会社アプロディーを設立。「生活潤いサービスの創造」を理念に、衣食住の「衣」の分野で積極的に事業を展開する。2009年、一般社団法人日本リ・ファッション協会、代表理事に就任。生活を見直してライフスタイルを変化させる「リ・ファッション」を提唱、循環型社会の実現を目指して活動している。

生年月日:
1965年
出身:
茨城県
出身校:
東京CPA専門学校

- どのようなお子さまでしたか?

小中学生の頃はあまり目立たない子でしたね。絵画やお習字は得意でしたが、スポーツも勉強も特に目立ってできるほどではなかったと思います。そんな自分に対して子供ながらに、周囲に認められるには何か秀でるものや人と違うユニークなものが必要だと考え、「いつか自分らしく輝きたい」と思い描いていました。

- 16歳で起業を決意したそうですが?

「女の子なんだから地元の短大へ進学して、早く結婚しなさい」とよく言われていました。ですが私はこのことに疑問を感じて、「世の中には自分にしかできないことがあるんじゃないか」と考えるようになったんです。結局、型にはめられるのが嫌いで人生を楽しみたいという意識が強かったんだと思います(笑)。もちろん、高校生になってすぐ「社長になる」ことを目指していたわけではありません。実は、私の祖父がいわゆるベンチャー社長で、戦後の復興期に日本の産業を発展させ、日本を良くしていこうという視点をもった人でした。小さい頃に祖父の話を聞きながら、私も社会に貢献したいと思ったのが起業を目指した元々のきっかけです。それでも高校時代はまだ自分の得意分野と起業を上手く結びつけられずにいて、漠然と大好きで得意だった理数系を活かした仕事をしたい、と思っていた程度。最初は大学も理系に進むつもりでしたが、2年間の短期集中で経営判断に不可欠でかつ理数系を活かした資格を取りたいと思い、会計士や税理士の専門学校へ進学しました。そこの校長先生が「経営に重要なのは財務会計である」「企業が伸びていくには管理会計が要である」とおっしゃっていて、社長になるために会計を習得しようとみっちり勉強しました。そして、他社にはない技術で商売をしたいと考え、専門学校卒業後は当時急成長していたコンピューターの世界に入ったというわけです。

- IT系の会社アプロディーを設立してから、リ・ファッション協会の代表理事を兼務するまではどういった経緯があったのでしょう?

最初に就職したコンピューター業界は急激に伸びている陰で、若い人材が使い捨てになっている印象がありました。充分な研修や教育を受けないまま、苦労している人を何人も見かけましたね。それが人や物を使い捨てにする社会に疑問をもつようになったきっかけです。そして、文化や人、技術、創られたモノを無駄にせず活かしていくライフスタイルの変化=リ・ファッションという考えを提唱し、活動をスタートさせることにしました。リ・ファッション協会は、古着の回収やリメイクといった「モノ」の面がクローズアップされがちですが、ベースとなっているのは「人や技術を使い捨てにしない」という考え。そして、さまざまな活動を通じて本当に訴えたいのは「お互いをリスペクトしよう」「共生、創造により循環型社会を実現しよう」という理念なんです。

- リ・ファッション協会の活動について教えてください

リ・ファッション協会は、生活スタイルを見直したり、新しい価値観を創造することによって「循環型社会」のライフスタイルをおくれる人を増やし、世界を変えていこうと活動をしています。理念に賛同してくれる方は沢山いますが、私達独自の方法論にも賛同できるかがポイント。そこでまず私達と実際に顔を合わせて、人として信頼関係を結べるか、本当に理念に賛同できるかを体感してもらうことからスタートしています。一見、地味で手間のかかるやり方に見えますが、この方法が一番根付くと私達は考えています。

- 2009年にリ・ファッション協会を設立してからの歩みを教えてください

設立直後の1年は、協会の形を作ることで終わってしまいました。2年目から、リ・ファッション推進の2つの柱である「リ・ファッション コンテスト」、「リ・ファッション ラボ」をスタートさせました。「リ・ファッション コンテスト」とは、家庭から集まった不用な衣服をリメイクして新たに服を制作するコンテスト。「リ・ファッション ラボ」とは、不用になった衣類を有効活用しようという活動。この2つは現在でも活動の大きな柱となっています。「リ・ファッション ラボ」には1週間で大きな段ボールで70~100箱程の衣類が届きます。届いた衣類は、様々な目的・用途でリユース・リサイクル・リメイクをしています。途上国支援目的での海外送付先の中では、距離も近く日本人の体形とも合うカンボジアに送ることがもっとも多いですね。衣類を仕分けしていると、全国のご家庭の様子が垣間見えるし、物からのメッセージも伝わってくるんです。なかには中古品として売れそうな品もあれば、ボロボロの衣類もある。けれども送ってくださる方の気持ちはどれも一緒。どうか世の中のために活かしてください、という気持ちです。これをしっかり受け取り、次世代の人や使い捨てを始めつつある途上国の見本になりたいと考えています。

- 東北の復興支援も行っているそうですね

東北の被災地にもリユースの衣類を送っています。震災直後は皆さん困っていて、衛生的であればユーズド下着でも構わないという時期もありました。今、商店街ができた地域にはリユース衣類のお届けを控えるべきかもしれませんが、なかには生活保護を受けたくてもさまざまな理由で受けられない方もいらっしゃるので対象を限定して活動は続けています。また毎年のように国内で自然災害が起こっているので、これからは東北以外の場所でもすぐにリユース衣類をお届けできる体制を作りたいですね。それから私達は、東北の“手仕事”を応援しています。東北はもともと縫製工場がたくさんあり、手仕事が盛んな地域なんです。震災後は新たな工場も建たず、内職の仕事もない状況。新しい材料を買って渡すことは難しいけれど、古着を材料にして新たなものを作り出せれば活性化にも繋がる。実際に、当協会が送っているものから、商品が日々作られているんですよ。

- 今後の展望について聞かせてください

来年パリで開かれる日本文化フェスティバル「ジャパンエキスポ」に出展して、着物のテキスタイルを使った新しいものを紹介したいと思っています。私達が目指している新しい価値観で心豊かな生活を送る「循環型社会」を作るには、日本の古き良き文化を見直して生活に取り入れることが大いに役立つと思うんです。ですから、日本に古くから伝わる匠の技術を日本国内はもちろん、海外にも広めていきたいですね。

- 苦労された経験や失敗談はありますか?

失敗はいっぱいしていますよ(笑)。やりたいことはたくさんあるのに人や予算が足りず、企画が実行に移せなかったことなど多々あります。またよくご指摘を受けるのですが、「活動内容は素晴らしいのにまだ世の中に広く知られていない」ということ。自分自身、IT系の会社を経営しているので伝えること自体は得意なはずなのに、バランスよく活動できていないことが今後の課題でもあります。

- 起業を考えている方にメッセージをお願いします

自分の人生を大切に生きることを意識して、そのためには「何を仕事にするか?」「自分らしい働き方とは何か?」というテーマを追究してほしいと思います。これを怠っていると、いつまでも小さなことで悩んだり、せっかくのチャンスを逃したりしてしまいます。また一般に、ソーシャルビジネスはお金にならないといわれていますが、ボランティアの延長ではなく生活できるだけのビジネスモデルを確立しようと私達は考えているので、ソーシャルビジネスに興味のある方はぜひ一緒にやりましょう!

- 座右の銘を教えてください

私が尊敬する社長に聞いた「本物に出会い、本物を知り、本物を学び、本物になる」という言葉です。壁にぶちあたったときや躓いたときはこの言葉を思い出して、「何がいけなかったのか?」「これで良いのか?」と考え直していますね。学ぶ姿勢をもち続けないと、本物にはなれないと思っていますから。

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