“鎌倉の古きよき日本家屋から100年続く投資信託を目指す”

鎌倉投信 株式会社
代表取締役社長
鎌田恭幸

インタビュー: 2014/10/20

大学卒業後、25年以上にわたり、日系・外資系信託銀行の資産運用業務に携わる。株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長に就任。その後、2008年11月 鎌倉投信株式会社を創業。鎌倉に本社を構え、社会をほんとうに豊かにするための金融のあり方を追い続ける。鎌倉投信が設定・運用、販売する投資信託「結い 2101(ゆいにいいちぜろいち)」の純資産残高は112億円(平成26年9月末現在)。

生年月日:
1965年
出身:
島根県
出身校:
東京都立大学

- 鎌倉を事業の拠点にされたわけとは?

投資信託の委託(運用)と販売の事業を行っていて鎌倉に本社がある、しかも鎌倉の駅からも遠く、築100年以上の日本家屋である、と聞くと、いろいろな疑問が沸いてくるかと思います。鎌倉投信を立ち上げる時、私を含めた創立メンバー4人で時には合宿をし、企業理念や社会にどんな貢献をしていくか、自分たちの立ち位置、人々にどんな価値を提供していくのかなどを徹底的に話し合い、目指すべきビジョンを固めました。会社を起こす際、一番大切なのは、自分たちの立ち位置についてしっかりとしたイメージを創りあげることだと考えています。その結果、自分たちが発信していきたいメッセージをもっとも効果的に伝えられるのは、自然や伝統文化に溢れ、武家社会を創ったり日本発のナショナルトラスト発祥の地でもあったりする鎌倉のこの場所だと思ったのです。

- 具体的なビジョンについて教えてください

鎌倉投信が大切にしている信条は、3つの「わ」です。ひとつは、日本の普遍的な価値を感じることができる場としての「和」、もうひとつは、会話や言葉に溢れ、夢や希望を分かち合う場としての「話」、最後に、人が集い、言葉が集い、夢が集い、それらが広がる「輪」。鎌倉投信はこの3つの「わ」を育む場でありたいと思っています。そのためには、従来のような短期的リターンを求める短絡的な投資ではなくて、いい会社を長期的な視点をもって応援する投信を形づくりたい。これは、これまでの日本の投資信託には余り見られない概念です。100年個人投資家の方々に支持される長寿投信として、300年社会に貢献する企業を支援し、そして1000年続く持続的な社会を育みたいというのが、私たちの目指す道。そんなメッセージを都心にあるビルから伝えようとしても、人の心にはなかなか届かないですよね。さきほどの本社をどこに置くかの話にもつながりますが、事業を展開していく上で、どこで、どんなメッセージを伝えるかが、とても重要なのです。

- 御社のファンドについてお聞かせください

当社が手がける投資信託「結い 2101」には、次の世紀2101年に向けて、人と人、世代と世代が結ぶ豊かな社会を多くの方々と創造したいという思いが込められています。皆がお金を持ち寄ることで、一人では投資できないような多くのいい会社を応援でき、信頼できる株式群を保有することができます。当社が考える「いい会社」とは、本業を通じて社会に貢献できる会社。本業を軸に事業を展開し、人財を活かす場を増やしたり、社会に豊かな貢献をし続けたりする会社を応援していきたいと考えています。そして、その想いに共感してくださった個人投資家の皆様に、「資産形成」「社会形成」「心の形成」の掛算をリターンとして受け取っていただきたい。子の代はもちろん、孫の代まで続く長寿投信を目指す理由は、そこにあります。

- 投資家の皆様とふれあう機会はありますか?

年に一度、ファンド決算後に独自に「受益者総会」というものを実施しています。受益者の皆様に「結い 2101」の決算、運用状況をお伝えすると共に、投資家、投資先企業の経営者の方や関係の方々にお集りいただき、会社の売上げや利益といった数字的な話ではなく、どんな想いをもって仕事をしているのか、仕事へのこだわりなどについて、語っていただいています。総会の雰囲気はとても和やかで、参加してくださった投資家の皆さんの表情もたいへんイキイキしていますよ。

- 投資家の皆さんがいい表情をされるわけとは?

これまでは、お金に余裕があるけれど「投資=お金儲け」というイメージが強すぎて、敬遠していた層の方々がいらっしゃいました。そういう方々は、お金は貯金するか、寄付するかの選択肢しかなかった。そこに、私たちのような長期に渡っていい会社を応援して、社会貢献や孫の代までの資産形成を考える投資信託があることを知り、新たなお金のゆき先をもっていただいた、そんな風に感じています。当社はこれまで、HP等自社以外の媒体を用いた広告宣伝をすることなく、お客様が口コミで増えていき、創業から6年で約8000人の方々に支持されています。受益者総会では、皆さん、自分が応援している企業がどんな取り組みやものづくりをしているか、とても熱心に嬉しそうに耳を傾けていらっしゃいますよ。

- 今後の展開をお聞かせください

今でこそ、多くの皆様に私たちの想いを共有していただいていますが、最初は説明会を開いても1人しか参加者がいないというようなときもありました。それでも、自分たちが信じることをコツコツと伝え続けているうちに、少しずつ人が増えていったのです。今後は、「結い 2101」をさらに成長させ、自分たちの理想の形までもっていけたら、何らか次の展開が見えてくると考えています。一例として、まだどんな形になるかは未定ですが、国内に限定することなく海外の企業への投資等もあるかもしれません。今は可能性を限定せずに大きく夢を描いていきたいですね。

- 鎌田社長にとって“お金”とは?

私にとってお金は、命です。皆様から預かっている命。投資家の方々が一所懸命働いて得たお金であり、ある方は子どもの教育資金にしよう、ある方は孫に残してあげたいと、皆さんの様々な願いがつまった、命そのもの。ですから、それを担っている私たちの責任はたいへん大きいと感じています。東日本大震災の直後、日本の市場規模は20%下落したといわれましたが、当社では震災後の週明け、「日本を元気にしたい」と投資家の方々からの入金が相次ぎました。その中の一人の投資家の方から、ある企業の社長さん宛に「がんばってください」というお手紙をいただき、それを読んで感激した社長さんからまたお礼のお手紙が届くといった、心あたたまる交流もありました。お金を介してどうつながるか、どんな思いでつながるか、私たち自身がいつも学ばせてもらっています。

- どんな起業家でありたいと思いますか?

私は、起業は1人でなく、信頼できる何人かとチームでやるのがいいと考えています。投資信託といった事業形態では、もともと1人では無理なこともありますが、やはり周囲に苦言を呈する人を置いて、謙虚であり続けることが大切かと。「本物とはなんだろう」と考えていたとき、私が行き着いた答えは、「その人が成し得たことの大小に関わらず、無意識のレベルで考えていることと、言っていることが一致している人」。どんなにいいメッセージを口にしても、本心で考えていることが違っていては、人の心には届きません。無意識レベルでそれが一致している人に出会うたび、心の底からすごいなと思います。私自身も「今を生きる」という言葉を胸に、一瞬一瞬を大切に生きながら、本物になりたいと願っています。