“全自動のクラウド型会計ソフト『freee(フリー)』で躍進”

freee株式会社
代表取締役
佐々木大輔

インタビュー: 2013/12/13

1980年、東京生まれ。2002年、一橋大学商学部卒業。派遣留学生としてストックホルム経済大学に在籍。在学中からITリサーチ会社にてインターン、契約社員としてリサーチ集計システムや新しいマーケットリサーチ手法を開発。卒業後は博報堂にてマーケティングプランナー業、投資アナリスト等を経て、2008年にGoogleに参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Googleマップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括を担当。2012年7月freee株式会社(旧CFO株式会社)設立。

生年月日:
1980年
出身:
東京都
出身校:
一橋大学

- 『freee』とは、どのようなサービスですか?

かつては事業を始めようとすると、設備投資など多額の資金が必要で経理専門の担当者を置くか、逆にすべて外注してしまうといったスタイルが多かったように思いますが、今はスモールスタートが可能で、いろいろなことをネットで調べて、自分でやってしまおうという人が増えています。しかし、経理など、実際にやってみると時間がかかってしまいます。実はシンプルで自動化が可能な作業は、そこを支援することで事業主には「本業に特化して活性化してもらいたい」と、全自動のクラウド型会計ソフト『freee』を提供しています。

- なぜ、会計ソフトに注目されたのですか?

僕自身の経歴がバックグラウンドになっています。1つ目は、前々職で事業の立ち上げに携わり、財務の責任者(CFO)をしながらプロダクトの開発を行った経験です。経理もいれば、エンジニアもいるという状況の中で、経理の効率化が可能なことに気づきました。従来の経理のやり方は、領収証から数字を入力して台帳に貼り付けたり、確認作業を繰り返すのですが、エンジニアは1度入力したものをどう参照するか、2度繰り返していることはどう簡素化するかを考えます。このギャップを埋められたら、経理担当も経営者も、もっとクリエイティブな仕事ができるだろうと、原体験になりました。2つ目は、クラウドの誕生でした。もう6年も前、前職のGoogleに入社した時に社内ツールのすべてがクラウドになっていて便利だったので、これからはすべてがクラウドに変わっていくと確信しました。ところが、1年前に振り返ってみると、何も変わっていないことに驚きました。3つ目は、日本の開業率の低さと、IT時代に相変わらずfaxで仕事をしているように、テクノロジー導入が遅れていることへの危機感でした。
なぜ、こうした状況に陥っているのかと言えば、リスクをとって中小企業向けに使い勝手のいいサービスを提供しようとするところがないからです。それなら自分が新しいサービスを提供しようと踏み切りました。中小企業のマーケットに通じていましたし、自分がCFOとして経理の簡素化の必要を感じてたこともあり、取り組みやすい分野でした。

- 起業の芽はいつ芽生えたのでしょうか?

僕自身は大学時代にインターンをしていて、スタートアップを経験しました。当時、ITでアンケート調査したものを集計していたのですが、自動化と言いながら、実際には記入されたデータを手動でコピペしていました。非効率に感じていたので「僕に1カ月くれたら、自動化してみせます」と。コーディングの技術を持っていたわけではなかったのですが、社内で小規模に自動化している部分はあり、たぶん1カ月取り組めばできるだろうと申し出たら、「面白いからやってみろ」と任されました。その後、「新しい調査ツールを何か考えてみろ」と言われて提出したところ、社会で評価されたという経験が、企業という立場から世の中に価値を提供していくことの面白みに気づかせてくれました。それまで、実は金融工学の研究者になろうと思っていました(笑)。

- 起業に至るまでの職歴は?

新卒で入社した広告代理店・博報堂に2年半、投資ファンドに1年、ベンチャー企業に1年、Googleに5年いました。Googleが長かったのは、取り組むべきテーマがたくさんあったことが大きいですね。最初がデータアナリストチーム、次が中小企業向けマーケティング、その後に日本だけでなくアジア・パシフィック全域へ向けての展開。それぞれ、まったく違う仕事でした。Googleの面白さは、テンポの速さにもありました。前職のベンチャーと比べても通常の1年がGoogleの3カ月に相当すると感じたことにカルチャーショックを受けました。3カ月で結果の出ないプロダクト、結果を出せない人はどんどん忘れ去られていくスピード感。新卒で入った広告代理店の2年半がGoogleでは3カ月の1単位といった印象でした。

- 開発は佐々木社長、ご自身で?

その頃、事業を一緒に立ち上げたエンジニアの横路と知り合いました。それまで、私自身は多少のコーディング作業をする程度でしたが、これを期に勉強しましたね。我が家の居間に2人で籠もって半年ぐらいかけて、プロダクト『freee』の原型を創り上げました。その後、資金調達もして、エンジニアも増やしながら、今年3月に正式リリース。半年を経た今、登録事業者数10,000件を突破しました。BtoBの中では、かなり早いスピードで成長しています。

- スタートアップビジネスで大切なこととは?

スピード感が大切だと思います。『freee』立ち上げの当初、議論・検討に時間をかけてしまったのですが、重要だと思うこと、必要だと思う部分から、まずはどんどん創ることをすべきでした。行動して結果をつくり、ユーザーのフィードバックを受けて修正するなり、完成度を高めていくことを、今は徹底しています。Googleで体験した3カ月サイクル、freeeの規模ではもっと早く進める必要があると思っています。今後の僕の役割はfreeeらしい意思決定とは何かを提示すること、方向性を示すこと、価値基準を共有することです。当初は自己資金で始め、リソースもなかったのでコーディングもしましたが、その後、資金調達もして、今は圧倒的に優秀なチームがいます。僕自身は職業的なエンジニアではないので、新機能の開発はチームに任せています。

- 『freee』の目標は?

日本国内で言えば、100万社に使われる会計ソフトにしたいと思います。現在は、より使い勝手のよいソフトにすること、サービスの拡張を進めています。大学時代に関心のあった金融工学は、人の行動をモデル化し、数式に置き換えて展開を予測するといった面白みがありました。ソフト開発は作業の効率化を狙っていますが、そこに作業を定式化するようなイメージを持っています。目指しているのは、スモールビジネスの経営支援ツールです。会計は経営支援の核なので、今後もブレずに続けながら、経営支援の方法を探っていきます。

- 座右の銘は?

「新しい自分に出会おう」です。広告代理店時代の最初の上司、たぶん20歳くらい上だと思いますが、上司に言われた言葉です。仕事を通して自分のvalue(価値)を高めていくことが大切です。企業の大小でも名前でもなく、自分自身の価値。そこにつながりますが、今している仕事でどんな新しい自分に出会えるか、常に意識しています。現在の社員数は12人、社員にも「新しい自分に出会う」体験をしてほしいと思っています。

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