“就労困難者を積極的に雇用し組織を成長に導く”

アイエスエフネットグループ
代表
渡邉幸義

インタビュー: 2014/05/30

武蔵工業大学(現、東京都市大学)機械工学科卒業後、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現・日本ヒューレット・パッカード株式会社) に入社。2000年に株式会社アイエスエフネットを創業する。ネットワーク市場において、倫理観、接客マナーを持ったネットワーク(インフラ)エンジニアの育成に力を注ぎ、同時に、一般的に就労困難といわれている人々の雇用創造を積極的に進めている。

生年月日:
1963年
出身:
静岡県
出身校:
武蔵工業大学(現・東京都市大学)

- 子どもの頃は、どんなことに興味を持たれていたのですか?

中学の頃から化学に興味を持ち始め、将来は研究者になるか起業するかのどちらかだと思っていました。いくつかのものを組み合わせて、今までにない新しいものを作り出すというのが化学の発想。新しいビジネスモデルや、社会的問題を解決する手法を生み出すのもこれと同じです。また、家族、特に母親にとても大切にされて育ち、大学入学のため上京してからも、毎月地元に戻って食事をしたりしていました。現在私は障がい者や就労困難者の雇用を積極的に進めていますが、それも家族によって育まれた母性のようなものが背景にあるのかもしれませんね。

- 起業の経緯についてお聞かせください

大学卒業後は、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現・日本ヒューレット・パッカード株式会社)に入社しました。外資系企業を選んだのは、将来は独立したいという思いがあったからです。まだ草分け的存在だったプロバイダ事業などに携わる中で、デジタルネットワークの可能性を強く感じ、2000年にアイエスエフネットを創業しました。インターネット市場の拡大に伴い、それを支えるエンジニアの必要性も高まるだろうと仮説を立てたわけです。ただ当時はエンジニアの数も少なく、ましてや創業したての小さな会社に来てくれる“人財”はいません。そこで「いないなら育てよう」と、まず雇用してから育成するというビジネスモデルを考えました。

- 障がいのある方を積極的に雇用するようになったきっかけは?

2000年当時の日本には、情報システム事業を担うようなネットワークエンジニアがほとんどおらず、業界全体が極端な“人財”不足の状況にあったため、当グループのような新しい会社にはなかなか人が集まらず、たまにくる応募者はたとえ技術があっても人間的にどうしても好きになれない人がほとんどでした。そんな中「未経験ですが、どんな仕事でもやります!」という電話があり、会ってみると謙虚で前向きなとても印象のよい青年でした。そこで履歴書にこだわらず、経験者ではなくても意欲があって、変えられない過去よりも未来に対する約束が出来る人を採用してきた結果、入社した人の一定数がニートやフリーター、発達障がいやひきこもりの方など、一般的に就労が困難といわれる人たちだったんです。でもその特性や原因となる病気のことを知るうちに、彼らの持つ問題にも対応できるようになり、会社も成長していきました。こんなにもたくさんの人たちを社会はこれまで履歴書やテストで切り捨てていたんだなと、気付いた時に私は一切の差別はやめよう、むしろ就労が困難といわれる人こそ積極的に雇用しようと決めました。

- 就労困難者の方への「20大雇用」を掲げていらっしゃいますね

当グループでは雇用の創造を大義に掲げ、「5大採用」から始まり、続いて「10大雇用」のスローガンのもと、ニートやフリーター、障がい者、ひきこもり、シニア、DV被害者の方などの雇用を積極的に進めてきました。さらに2011年からは、性同一性障害や犯罪歴のある方などの雇用対象を大幅に拡大し、「20大雇用」を宣言しています。現在はさらに、高次脳機能障害を伴う失語症の方や生活保護受給者も対象に加え、先日、川崎市において生活保護受給者100名の雇用を実現しました。

- 今後の事業展開についてお聞かせください

当グループの基本的な考え方は、まず雇用ありきということです。一般的にはまず仕事があって、そのための“人財”を雇用するという考え方が主流だと思いますが、そうすると障がいのある方が選ばれることは殆どありません。私はまず人を選び、それからその人に対してベストな仕事はなんだろうと考えます。たとえば、ITが苦手で接客業をやりたいという方のためにカフェを運営したり、ひきこもりだった方のためにNPO法人を設立したりしたこともあります。そのようにして現在は事業の約40%をIT以外のサービスが占めていますが、今後も雇用のために仕事をどんどん作っていくつもりです。最終的な目標は、世界で一番就労困難者に優しい会社になることです。雇用者数でいえば数年後には国内トップになっているかもしれませんが、私の目標達成には恐らくまだまだですね。社員を10万人雇用し、そのうち8万人が就労困難者という会社を目指したいと思っています。

- 会社の中で大切にしている文化はありますか?

マネジメントに関しては「変わらないものを大切にする」という哲学を持っています。当グループでは海外からも積極的に採用を行っており、現在日本国内だけで約150名の外国籍の方が在籍しています。(他、海外支社の現地採用は約200名)言語や文化、歴史観や宗教が違うさまざまな人たちをマネジメントするには、テクニックだけのクロスカルチャートレーニングではうまくいきません。ですから、性別も年齢も国籍も関係なく、変わらない価値観を軸に行動することを大切にしています。赤ちゃんを見たら可愛いと思うとか、社長が偉そうにしていたら腹が立つとか、簡単に言えばそういうことですよ。また、私は20年以上前から毎日欠かさず「未来ノート」というものを書いています。朝起きたら2週間先をシミュレーションしてやるべきことを細かく書きだし、1日の終わりには実際の出来事と突き合わせてギャップを埋め、課題や気づきを書きこんでいきます。そうすると、ほぼ自分が思った通りの人生が送れるようになるんですよ。この未来ノートを幹部社員もつけています。

- 起業を志す方へのメッセージをお願いします

まず、何のために起業するのかを明確にするべきです。起業をするとかなり厳しい局面に立たされることもあります。それを乗り越えるには、やはり確固たる目的がないと難しいのではないでしょうか。中には、失敗してもいいように逃げ道を確保しながら起業する人もいるかもしれません。しかしそのような環境では、何かトラブルが起こった時に無意識に逃げようという考えが起こってしまいます。退路を断つ覚悟で取り組んでこそ、道は開けてくるのだと思います。

- 失敗談があれば教えてください

失敗談というわけではないのですが、一度だけ倒産の危機に陥ったことがあります。当グループのビジネスモデルは、まず人を雇用し、教育してから仕事を探す、というやり方ですからどうしても最初のところでお金を借り入れる必要があります。しかしある時、取引先銀行の合併によって査定基準が変わり、融資金を急遽全額返済しなくてはいけなくなってしまいました。融資を引き上げられたら会社は潰れてしまいます。そんな危機的状況にあった当グループが、何故今も存続しているか。それは、私の理念に共感した方が代わりに融資をしてくれたからです。有難く思うと同時に、倫理の大切さを身にしみて感じました。

- 座右の銘を教えてください

「自分以外の誰かのために汗をかく」ということです。そういう人に私は感動しますし、自分もそういう人間でありたいと思っています。私は、就労困難な方を積極的に雇用しようと思った時から休まず働こうと決め、実際この8年間はほぼ休んでいません。会社は家族だと考えているので、親が子どものために汗をかくのと同じです。社員もその姿を見ているから応援してくれる。「自分以外の誰かのために」という想いの強さが、組織を成長させているのだと思います。

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