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サイジニア株式会社 吉井伸一郎 独自の複雑系アルゴリズムで幸せに“出くわす”体験を

JOBSHIL編集部
サイジニア株式会社の代表と企業ロゴ
サイジニア株式会社の代表のプロフィール写真

サイジニア株式会社
代表取締役社長
吉井伸一郎

日本学術振興会特別研究員、ソフトバンクコマース株式会社(現・ソフトバンクBB株式会社)情報システム本部研究開発センター長などを経て、2004年から北海道大学大学院情報工学研究科複雑系工学講座の助教授を務める。複雑ネットワーク理論や機械学習を活用したビッグデータ解析技術は、日米で複数の特許を取得。2007年にサイジニア株式会社を立ち上げ、ネット広告事業などを展開する。工学博士。
出身: 北海道 出身校: 北海道大学大学院

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※この記事は「2014/07/07」に「ビジョナリー」に掲載されたものを、JOBSHILに転載しております。

前職は大学の先生を務めていらっしゃったとか

ずっとサイエンスが好きで、大学時代は研究者の道に進みたいと思っていました。当時の研究テーマは「複雑系」。物理学、生物学、経済学など世の中の多種多様な領域に共通する自己組織化現象と、それを情報工学的に応用する研究を大学院卒業後も行っていました。

特にウェブ上の行動履歴の分析に興味があったため、大量のデータの集積から個人が潜在的に求める情報をレコメンデーションする技術を開発したときには、とても達成感がありましたね。そして、その研究成果をウェブのサービスとして展開してみたいと考えるようになったのです。

ただ、それまで研究一筋だった私には、ビジネスのことは何も分かりません。そこでソフトバンクコマース株式会社(現・ソフトバンクBB株式会社)に入社し、通信技術の研究開発や世界標準化活動を通じてYahoo! BB事業に携わりました。

その後、北海道大学で助教授を務めながら研究を続けていたのですが、このアプローチの正当性を実社会で実証してみたいという思いを実現するために、当時の研究仲間や教え子とともに、2007年にサイジニアを設立しました。

社名に込めた思いについてお聞かせください

サイジニアという社名は「サイエンス」と「エンジニアリング」を掛け合わせた造語です。「先端サイエンスを駆使し、21世紀の課題をエンジニアリングによって解決する」という理念を表しています。

多くの先人達の科学的研究によって、生命の起源からヒッグス粒子まで、これまで多くの地球上の謎が解明されてきました。サイエンスの未開拓領域がなくなりつつある今、大切なのはサイエンス的思考と、それを具現化するエンジニアリングによる問題解決のためのアプローチだと考えています。

どのようなサービスを構想されたのですか?

知りたいことや探したいものがある時、多くの人は検索エンジンを使えば何でも探すことができると考えがちです。でも、検索エンジンを使うにはキーワードを入力しなければいけないので、自分が知らないことは探しようがありません。

たとえば、街を歩いていて見かけた洋服やバッグに一目ぼれをするような、そういった思いがけない“出くわす”体験というのは、検索エンジンでは不可能なことなのです。本当は欲しいはずなのに、適切なキーワードを知らないがゆえに出会えなかったもの。

それらを行動履歴の解析によってカバーしたいと開発したのが、その名の通り「デクワス」というディスカバリーエンジンです。クリックという動作には、目の前の情報の中から自分の幸せに繋げるための意思決定が込められているはずです。

さまざまな人のクリックという行動履歴を集め、同じような趣味嗜好を持つ人やモノに繋げていけば、その人の幸せや求めるものに一番近づけるのではないかと考えました。

今後の展開についてはどのようにお考えですか?

私たちは、「大量データの中から未来に活きる情報を紡ぎ出す企業へ」というビジョンを掲げています。

これまではインターネットを中心としたレコメンデーションサービスを展開してきましたが、それはデータの収集にもっとも適した環境がECサイトだったからです。

最近では、ネット広告分野への技術を応用・展開するほか、オンラインショップで購入した商品に同梱するチラシや明細書でレコメンデーションを行う、O2O(Online to Offline)領域のサービスも開始しています。

今後、IoT(Internet of Things)の仕組みが本格化する中で、オンライン上だけでなくリアル空間にも私たちのアルゴリズムを適用し、オムニチャネルでの展開を目指していきたいと考えています。

海外展開についてはいかがですか?

私たちの技術の特長は、言語に依存しないことです。現在、シンガポール、タイ、インドネシア、ベトナムなど、東南アジアを中心にサービスを展開しており、アメリカでも特許を取得しました。

「人は自分の幸せに近づける選択肢をクリックする」という行動原理に基づいて集められるデータを解析する技術なので、たとえ言語が異なっていても機能しますし、むしろ多言語地域でこそ強みを発揮すると思っています。

社内で大切にしている文化はありますか?

宇宙物理学の研究者や博士号を持つ者など、当社にはさまざまな知識と経験を持つ人材が集まっています。多種多様な能力を持った人たちが集まっていることでお互いの刺激にもなりますし、彼らの知的好奇心を常に満足させるテーマ設定を大切にしています。

研究成果がすぐに結果としてあらわれるので、そういった意味ではやりがいも大きいのではないでしょうか。毎月取り扱うデータは月間でユーザー数2億人分、300億インプレッションほどになります。

これら膨大なデータを対象にして、開発したプログラムやアルゴリズムの成果が翌日にはすぐ分かりますから。エンジニアやデータサイエンティストにとって、チャレンジするためのステージはたくさんあると思いますよ。

失敗談があれば教えてください

設立当初はシステムのアルゴリズムにこだわりすぎてしまい、「どう売るか」という仕組み作りが後回しになっていました。マーケットのニーズに合わせるよりも、自分たちの作りたいものを追求してしまったので、ビジネスとして確立させるまでに時間がかかってしまいました。

起業を志す人へのメッセージをお願いします

起業は、やってみないと分からないことがたくさんある世界です。当初、私は楽観的に始めたのですが、実際やってみると経験したことがない難しいことがたくさんありました。

でも何かうまくいかなくても、それを乗り越えて次に繋げることができれば、それは成功になります。最悪の失敗は、「もうダメだ」と諦めたまま何も学習しないことだと思うのです。

早くに失敗に気づいて何かを学習できればそれは成功の糧になる。ですから、決意したなら早く始めてチャレンジを繰り返していってほしいと思います。

好きな言葉はありますか?

フランスの細菌学者、ルイ・パスツールの「Chance favors the prepared mind」という言葉があります。「チャンスは備えあるところにやってくる」という意味です。どんなに大きなチャンスも、自分の心が準備できていなければ気付くことすらできません。

研究者だった私が縁あってソフトバンクに入社したのも、大学を退職して会社を設立するという選択ができたのも、全てその時に心の準備ができていたからです。準備された心にこそチャンスはやってくる、チャンスをつかむことができる、と大切に意識しています。

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