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株式会社エムスクエア・ラボ 加藤百合子 子どもたちにより良い社会を母の想いが農業を変える

JOBSHIL編集部
株式会社エムスクエア・ラボの代表と企業ロゴ
株式会社エムスクエア・ラボの代表のプロフィール写真

株式会社エムスクエア・ラボ
代表取締役社長
加藤百合子

大学卒業後、1999年にイギリスのCranfield Universityで修士号を取得。大手メーカー勤務を経て、結婚を機に現在の活動拠点である静岡に転居した。親族の経営する会社でロボット開発などに携わったが、2回の出産と子育てを経験するうちに直接子どもたちの役に立つ仕事をしたいと2009年エムスクエア・ラボを設立。青果の安定供給や商品開発などを担う「ベジプロバイダー」をはじめ、農業とコラボする事業を展開している。
生年月日: 1974年 出身: 千葉県 出身校: 東京大学

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※この記事は「2014/08/08」に「ビジョナリー」に掲載されたものを、JOBSHILに転載しております。

どのようなお子様でしたか?

自然やアウトドアが大好きで、日が暮れるまで外で遊んでいるような子どもでした。家族の誰ひとり私が勉強の道へ進むとは思っていなかったくらい、勉強は苦手だったんです(笑)ところが小学校高学年の時、兄や親せきの影響で中学受験がしたくなって、小学6年生から勉強をはじめました。

それまでは本も読まなかったし、最初は塾でもビリだったのですが、一度勉強にハマってしまうと面白くて、受験が終わってもずっと机に向かっているほど。特に数学が大好きでしたね。

会社経営に興味をもったのはいつごろだったのでしょう?

父も祖父も商売人という家に育ったので小さな頃から会社経営に興味はあって、働けばお金が入ってくるというイメージは持っていました。

大学生の頃には、周囲へ「会社経営をしたい」と言っていたのを覚えています。ですが、高校生までは環境関連の研究者になろうと思っていたため、大学は東京大学の農学部に進学しました。

大学に入っても環境問題や食糧問題への関心は変わりませんでしたが、”環境”というあまりにも大きなテーマを前に「私がやっても世の中は変わらないんじゃないか」と思ってしまって、食料生産に寄与できる農業機械の勉強にシフトしたというわけです。

大学卒業後はどのようなお仕事をしていたのでしょう?

東大を卒業してからはまず、イギリスで修士号を取りました。その後、アメリカでNASAのプロジェクトに少し参画した後、帰国して大手メーカーに就職しました。これが専攻していた農業機械を活かした仕事で、とっても楽しかったです。

その後、26歳で結婚して夫の親族が経営する会社がある静岡に越してきました。そこでは産業用機械の研究開発として、数値解析や制御のためのアルゴリズムを作るといった数学を活かした仕事をしていました。

起業のきっかけを教えてください。

最大のきっかけは、出産・子育てですね。子育てをしているうちに、再び環境問題や食糧問題に目を向けるようになりました。

工業というのは世界と戦って世の中の役に立つ仕事だけれど、子どもに理解されづらい仕事。

さらに、私の仕事が本当に社会を豊かにするのか、母親としてするべき仕事なのだろうかという疑問が出てきてしまい、悩む日々がありました。

そこで、農業の勉強をし始めると、取り組むべき課題の多い産業だと気づき、エムスクエア・ラボの設立に踏み切ったというわけです。エムスクエア・ラボという社名はママラボの略で、 “Mama”のMを2つ取って”M2”を英語読みしたものなんですよ。

起業して苦労したことは?

以前、青果流通を手がけていた時のことです。生産者、卸先とも仲は良かったのですが、ある卸業者が夜逃げしてしまい、未だに売掛金の約半分が回収できていない状況です。ただそこで、青果流通が売掛金の未回収というリスクの高い仕事だと学ぶことができました。

さらに調べると、卸業者がどんどん潰れている状況であることを知りました。これは青果を販売する人が減ってしまうことに他なりません。生産者も卸業者も消費者も喜ばないこの状況を整頓したほうがいいだろうと考え、「ベジプロバイダー」というサービスをはじめました。この売掛金未回収という失敗が、今の事業の柱を作るきっかけになりましたね。

御社の事業について教えてください

一言でいえば、農業と外食産業の間をつなげるコーディネーター業務。具体的には、シェフの方が欲しがっている食材を探したり、それを農家の方に作ってもらったりしています。また逆に、農家の方が「こんな商品があるよ」と言えばシェフに提案することもありますね。

ひとつひとつの活動は小さいけれど、影響力の大きいシェフの方々が多いので、その先にいるお客様に「食」を伝えられる仕事です。ほかにも「農業×工業」など、「農業×他業種」という切り口で業界の垣根を超えて協力していこうと「アグリイノベーション(Agri+Innovation)」という活動をしています。

カメラとセンサーが一体になっていて、家にいながら畑の観測ができるシステムを静岡で使う試みや、農家の方からホームページ制作の相談を受けることもあります。研究開発をしなければ状況は変わりませんし、テクノロジーを活用しながら農業の現状を変えていきたいと思っています。

育児をしながらの起業は大変なことも多いのでは?

子どもたちが大きくなったときに少しでも良い社会を残したい、というのが仕事の原動力ですね。

母親になったからこその気づきがあって、環境問題に再び目を向けることになりましたし、子どもに「ママがどんなお仕事をしているか、知ってる?」と聞くと「おいしいか、おいしくないか、見る仕事!」とすぐ返ってくるので、今の仕事は子どもにとっても分かりやすいし、そばにいるような感じをもってもらえる仕事だと思います。

今後のビジョンを聞かせてください。

農業“全体”をコーディネートすることを目指しています。コーディネート業の中でも、需要と農家とをつなぐ部分はうまくいくことがわかってきたので、次の取り組みはできあがった青果を流通させる工程。現在、物流会社とテストしている段階です。

情報流通に加えてモノの流通までできると、消費者の情報も集まって、生産者と消費者をつなげる仕組みができあがってきます。現在は静岡県で活動していますが、モデルケースが整ったら一気に全国展開をしたいと考えていて、いずれは世界にまで広げていきたいです。

また、野菜の宅配のようなBtoCのビジネスは、オイシックスや大地を守る会にお任せをして、私たちは、シェフや惣菜会社を通じて消費者の方が「知らない間に良いもの食べていた」という流れを作りたいと思っています。

会社の文化はございますか?

まだ”会社の文化”と呼べるほどのものはありませんが、「美味しいものをきちんと提供しましょう」という想いは共有しています。最近では、「ベジプロバイダーの3か条」というのができました。「1.美味しいこと、2.生産者が主役であること、3.履歴が分かること」という内容です。

農家はもちろん、消費者、我々も含め、みんなが“win win(ウィンウィン)”になる事業をする、という行動規範もあります。どちらか一方が勝ち組というやり方では、持続可能にはなりません。ベースにある「持続可能な社会を」という理念を共有しながら日々やっています。

地方都市のあり方にこだわった活動をしているそうですが?

当社は、本気で静岡を盛り上げようと尽力しています。これからは、消滅する地方都市が出てくるような厳しい時代。

ただ、生き残る策もちゃんとある。リーダーとそれを支える人がいて、ベンチャーマインドで本気で取り組む地域が生き残ると思うのです。

皆でスクラムを組み、力を合わせて頑張ろうという流れを、静岡から全国に広げたいと思っています。

就農を希望する方へのメッセージをお願いします

ずばり「やるべき!」ですね。イメージとは違うかもしれませんが、農業はきちんと儲かる仕事。食はなくならないし、世界的に見れば需要も増えています。その一方、就農人口は減っていますから、状況的にみても農業はダントツでおすすめですね。

野菜作りというと、難しく捉えられがちですが、3年程研修すれば色々なものが作れるようになりますよ。儲かっている農家は、きちんと需要を満たす生産、シンプルな経営をしているだけです。

もし、不安であれば農業と他業種といった“掛け算”をしたら良いスタートが切れるのではないかと思います。ただ、農業はモノづくりなので、向いている人、向いていない人がいることは事実。自然と対峙する部分もあるので「儲かるからやろう」では挫折してしまうし、技術を大切にすることが必要ですね。

座右の銘を教えてください

福沢諭吉の「人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」です。仕事ができる人、上手くいかない人、嫌味を言う人、すぐ口論になる人、逆に何も言えなくなってしまう人、いろんな人がいますが、人として上も下もないというのが私の根底にある思想です。

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