““人生のおもてなし”で最期の時を豊かに”

有限会社順洋会むさし野
取締役社長
下村英里子

インタビュー: 2013/12/13

1983年、東京生まれ。2005年、早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科にてMBA取得。2007年、ロンドンメトロポリタン大学院に留学し、国際関係を学ぶため1年在籍。帰国後、政党本部スタッフとして2年半勤務。2012年10月、父の運営する医療法人グループの介護事業部門を母から引き継ぎ、「順洋会むさし野」の取締役社長に就任、現在に至る。

生年月日:
1983年
出身:
東京都
出身校:
早稲田大学

- まずは、順洋会グループの「順洋会むさし野」の位置づけを教えてください。

我が家は父が医師です。順天堂大学で小児外科医をしていましたが、「ゆりかごから人生の終焉まで」を診る総合医が必要だという思いから、1999年、東京都清瀬市に「武蔵野クリニック(現・武蔵野総合クリニック)」を開設し、翌2000年に医療法人社団「順洋会」を立ち上げました。地域医療に取り組むうち、医療だけでは高齢化が進む患者さんの問題に応えきれない、日常の生活を支える介護も必要だということになり、2006年に介護事業部門として「順洋会むさし野」を立ち上げ、当初は母が運営していました。「順洋会むさし野」は、清瀬市に隣接する東久留米市に、介護付き有料老人ホーム「むさし野ガーデン」と居宅介護支援事業所、訪問介護事業所の3事業でスタートしました。「武蔵野クリニック」を有床診療所の「武蔵野総合クリニック」へと規模を拡大したこともあり、母は医療法人の事務に専念、「順洋会むさし野」を私が引き継ぐことになり、昨年(2012年)10月に取締役社長に就任しました。

- 下村社長ご自身の介護に対する思いをお聞かせください。

私自身は、早稲田大学の文学部を卒業後、経営や国際関係を学んでいたのですが、留学先のロンドンから帰国する際に、国会議員の秘書から、「みんなの党」の立ち上げの手伝いに来ないかとお誘いいただきました。当時の「みんなの党」はできたばかりのベンチャー企業と同じでした。大規模政党ではできないコアな仕事を体験させていただけるならと承諾。本部職員として2年半、風通しのよい職場で、いろいろな仕事を経験させていただきました。政治の世界は、ありとあらゆる方々に対して門戸を開いています。北海道から沖縄まで、さまざまな方々から電話がかかってくるのですが、その大半が独居の高齢者であることは驚きでした。話は政治への要望よりも、とりとめのない日常生活を語る方が多く、本来なら夕飯時に家族と交わす内容が繰り返されていることに愕然とする日々。日本には切羽詰った高齢者が大勢いることに気づかされました。「これは何とかしなくては…」という思いがありました。
独居高齢者の問題は、政治では福祉が扱い、法律や制度を整備していくことになります。しかし、そこには膨大な時間を要します。そんな時、実家の事業を手伝ってほしいという話があり、身近な現実に取り組もうと決意するに至りました。

- 引き継いで1年、どう介護事業に取り組んで来られましたか?

スタッフは10代から60代まで年齢層の幅も広く、当初は、「こんなに若い経営者で大丈夫?」と思われていたことでしょう(笑)。私が引き継いだ時、会社の経営状況は安定しておらず、特に施設部門が大幅に足を引っ張っていました。私は、スタッフの方に認めてもらうためには、会社を軌道に乗せることが一番だと考え、施設運営のテコ入れに、がむしゃらに取り組みました。HPやパンフレットを一新、ロビーの改装、人員や経費の見直しまで、すべてに手を入れて数カ月後には、ほぼ満室の状態としました。現在の空室は1室です。さらに、今月(2013年10月)から24時間の看護体制を敷き、医療依存度の高い方々を受け入れる体制を整えました。24時間体制で看護が受けられる特定施設は、東久留米市では「むさし野ガーデン」だけです。

- 今後の事業展開は?

介護は、在宅(自宅)介護と、施設(老人ホーム等)介護の2つのパターンに大別できます。在宅での介護を支えるためには、利用者の自宅を訪れて身の回りの世話をするヘルパー、診察をする訪問医師、日常の看護を提供する看護師、薬の管理をする薬剤師など、多職種の連携が必要です。また、高齢者が引きこもりになることを防ぐため、レクリエーションやリハビリを提供するデイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)などの施設を利用することも大切です。弊社では、在宅介護を望む高齢者のニーズに応えるため、今後は在宅事業を拡大していきます。現在は、来年(2014年)春に訪問看護ステーション、デイサービスを開設するための準備を進めています。スタッフの給与を確保しながら、安定したサービスを提供し続けていくには、会社としてサービスの柱を増やすことが必要だという判断もあります。

- スタッフにはどのような思いを抱いていますか?

事業拡大のために、ヘルパー、看護師を募集中です。介護に携わる方々には、それぞれに熱い思いがあります。介護の理想と仕事の現実をいかに折り合っていくかが大きな課題だと感じていますが、私自身も、最期の時を「いい人生だったな…」と思いながら過ごしていただきたいと願い、“人生のおもてなし”を会社の理念に掲げています。また、医療・福祉の現場では、医師・看護師・介護士の役割分担が明確にされています。ひとりひとりが介護のプロとして自覚を持つため、「介護職のキャリアアップ」を応援し、スタッフが成長していける職場を目指しています。

- 座右の銘は?

映画のタイトルから『今を生きる』です。かつて、車に跳ねられて4mほど飛ばされるという事故に遭ったことがあり、救急車で運ばれながら、死を身近に感じたことがありました。この仕事に就いて、これまで以上に「生きるということ」、「死ぬということ」について日々考えさせられています。今ある貴重な時間を大切に生きたいと思っています。

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