“人間の心理や行動特性を探求することで、真に役に立つ高品質な製品やサービスを創出し、豊かな社会の実現に貢献する”

株式会社ビービット
代表取締役
遠藤直紀

インタビュー: 2014/06/06

1974年生まれ、横浜国立大学経営学部卒業。アメリカへの留学を通じてインターネットに興味を持つようになり、ソフトウェア開発会社に入社。その後アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)を経て、2000年3月ビービットを設立。「人間の心理や行動特性を探求することで、真に役に立つ高品質な製品やサービスを創出し、豊かな社会の実現に貢献する」ことを目指し、国内外でコンサルティング事業を展開。

生年月日:
1974年
出身:
鳥取県
出身校:
横浜国立大学

- どんな学生時代を過ごされたのですか?

大学時代には多くを経験しましたが、今に大きな影響を与えているのはアメリカ留学ですね。もともとスキンダイビング部で、世界中の海に潜りに行っていました。でも英語が話せなくて、海外で知り合った人たちとコミュニケーションをとることができなかったんです。「このまま日本語だけの狭い世界で生きていくのはもったいない」と思い、周りが就職活動している大学4年の1年間、アメリカに留学することに決めました。アメリカでは語学以外にも大きな影響を受けましたが、その一つがインターネットとの出会いです。現地で親しくなったジャパニーズアニメーションクラブのアニメファンたちが、当たり前のように生活の中にインターネットを取り入れている姿にカルチャーショックを受けました。また、ホームステイ先の家族が経済的に余裕がないにも関わらず「Eメールがしたい」と、当時非常に高価だったパソコンを購入していたのにも驚きました。アメリカではあらゆる層の人たちが一斉にインターネットに接続し始めている。間もなく世界中がインターネットでつながるだろう、就職するならIT業界だ。そう思って日本に帰国しました。

- 起業の経緯を教えてください

アメリカから帰国したのが大学卒業の2か月前。当然新卒採用は終わっていましたが、なんとかコンピュータ関係の仕事がしたいと思い、転職雑誌を使ってシステム開発会社に入社しました。その後、システムの戦略立案から携わることができる環境を求め、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に転職しました。インターネットバブルが到来したのが、アンダーセンでコンサルタントとして働いていた1998年頃です。後にネット業界の黎明期を拓くことになる方々との出会いや、周囲にも独立する人、後押ししてくれる声も多くあり、起業を考え始めるようになりました。そして「インターネットを使ったサービスを展開したい」と、2000年3月に仲間や先輩とともにビービットを立ち上げたんです。しかし船頭多くしての言葉の通り、会社の方向性が決まらないまま資金を3か月で使い果たしてしまい、13人いた立ち上げメンバーも離散、手元には莫大な借金だけが残るという状況に陥ってしまいました。そこで、「自分たちは何のために起業するのか」「何を理念に掲げるのか」ということを改めて徹底的に考えることにしたんです。

- ビービットの理念について聞かせてください

一言で言うと、「人間中心の社会作り」ということだと思います。立ち上げ期に「どうやったら会社経営がうまくいくのか」「そもそも企業ってなんなのか」という疑問へのヒントを得るため、世界的な大企業の創業記を片っ端から読んでいったんです。そして創業者たちに共通する考えに気づきました。それは、彼らの起業の目的は社会の課題を解くことである、ということです。20世紀、多くの企業は貧困に起因する様々な社会的課題を解決するために設立されました。松下電器の水道哲学や、フォード自動車のフォーディズムなどですね。モノがなかった時代は、モノをとにかく生産し、供給することが正義だったわけです。彼らの努力のおかげで、私たちが現在モノに困るということはありません。ならば私たちは21世紀の課題を解決するべきだと考えたわけです。では、21世紀の課題とは何なのか。それが「人間中心の社会づくり」だと考えました。たとえば、コンピュータに詳しい人が使いこなせない人を下に見るような風潮が今現在ありますよね。コンピュータは人間のための道具であるはずなのに、いつの間にか主従が逆転してしまっている。そういう現象が世の中にはたくさんあると思うんです。多機能だけど多機能すぎてユーザが使いこなすことのできない家電製品、過剰なサービスによってコストがふくらんでしまい、消費者が支払う価格に転嫁されてしまっているサービスなど、思い当たることがいくつもあると思います。100年前の創業者たちが課題とした貧困の問題は、物質的に豊かになることで解決したかもしれません。しかし、モノが溢れていれば人間は皆幸せというわけではない。人間中心の社会という、当たり前の根本にもう一度立ち戻ろう。それが、私たちが掲げている企業理念です。

- どのようにして現在のビジネスモデルに至ったのですか?

二点あって、一つは強みを活かそうということ。我々はコンサルティング会社出身だったので、コンサルティングという武器を活かしていこうと考えました。もう一つは「ユーザ中心」という考え方がビジネスにおいて必須だと印象付けるために、圧倒的な成果を出せる領域を選ぼう、ということ。その領域はインターネットだと考えました。これからのビジネスの主戦場になると確信していましたし、インターネットの特性として、ユーザが能動的に動くので、ユーザを真に理解してコミュニケーションを取らないと成果を上げることができないからです。こうして、デジタルマーケティングの領域でユーザを徹底的に理解したコミュニケーション戦略を立案する、という現在のビジネスモデルが出来上がっていったわけです。

- 今後の展望についてお聞かせください

ありがたいことに2000年の創業以来、多くのクライアントプロジェクトにおいて成果を上げることができ、ユーザ中心という考え方に賛同してくださる方の多さを実感しています。そして今後はサービスの広がりとエリアの広がりという2つの方向で考えています。まずサービスの広がりについては、これまではデジタルマーケティングの領域に特化していたわけですが、そもそも企業や商品自体がユーザの方を向いていなければユーザ中心の実現はなし得ません。今後は、企業活動を顧客志向に変革するサービスを進めていきたいと考えています。現在、顧客理解や提供価値を可視化するための新しいサービスを数社にトライアル導入していただいていますが、これからは本格的に開始したいと考えています。また2つ目のエリアの広がりについては、ビービットが実現したい「ユーザ中心の社会」は日本だけではないだろう、ということをかなり以前から話し合っていて、いずれは世界中の企業に対してサービスを行いたいと考えています。そのために2012年から海外展開を推し進めており、まずは台北、上海と東アジアにおいて拠点を作っているところです。

- 会社の中で大切にしている文化はありますか?

当社には、一人一人が高い意識で物事に取り組むための行動指針があり、中でも最も重視しているのが「価値創造に徹底的にフォーカスする」ということです。価値というのは誰かの役に立つということ。価値創造に徹底的にこだわれば、いずれ自分たちにも大きな喜びとなって返ってくるはずです。また、方法論を非常に大切にし、あらゆるサービスをプロセス化して再現性を高めることを重視しています。新入社員にも比較的早い段階からメインコンサルタントとしてプロジェクトを完全に任せていますが、それもこの確立されたプロセスがあるからこそです。

- 起業を志す人へのメッセージをお願いします

常に思っているのが「諦めなければ負けではない」ということです。どんなに苦境に立たされたとしても、課題に対する強い思いを持ち、諦めないで続けていけばきっと成功をつかむことができるのではないでしょうか。

- 座右の銘を教えてください

多くの創業記を読んでいた頃、お金がなくて古本ばかりだったのですが、ある本に挟まれていたしおりに「並びゆく人には よしやおくるとも 正しき道を ふみなたがへそ」という言葉が書かれていました。並んでいる人から遅れても正しい道を踏み外すな、という意味の言葉です。自分たちの理念や志を切り捨ててスピードを追っても何の意味もありません。成長を急いで失敗するよりも正しい道を全力で頑張って歩いて行きたいと、この言葉を心に刻んでいます。

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