“ITでイラスト・クリエイトを数量化・仕組化”

株式会社MUGENUP
代表取締役
一岡亮大

インタビュー: 2013/12/13

1986年生まれ。2010年、首都大学東京経営学部卒業。2006年、大学在籍時にSaaS事業の会社を設立、システム開発。2010年大学卒業後、三井住友銀行入行、法人営業を務める。2011年6月に株式会社MUGENUPを設立、「プロダクトがデータから作られる時代の、デザインデータメイカー」をテーマに法人向け2D•3D制作プラットフォーム「MUGENUP STATION」(https://station.mugenup.com/)を展開している。

生年月日:
1986年
出身校:
首都大学

- 『MUGENUP』とはどのような事業ですか?

多数のイラストレーターに登録していただき、アニメ、ゲーム業界等にイラストを安定供給しています。ゲーム制作を試みた経験から、クリエイティブ・ワークの工数見積もりができないことに問題を感じ、工程を可視化することを考えたことが始まりでした。イラストレーターなど、1人に発注する仕事では、納期も不確定です。ゲーム業界はコンテンツの多産多死の状況にあり、エンジニア、イラストレーターともに慢性的に不足しています。しかし、業界はエンジニアの求人には目を向けても、イラストレーターについては放置されていました。クリエイターの世界は「01(0か1か)」で、個人の能力に深く依存する属人化の傾向が強く、中でもイラストレーターが完成度の高い作品を生産するには、多くのケースで長年の修練とするため、生き残っていくこと自体が難しい。コンテンツ制作側では人材が不足しているのに、イラストレーターは続けることができずに業界を去っているという状況です。アニメや漫画はすでにチームで協働制作されることで、スケーラビリティが図られています。ネット上で可視化を進めてみると、線画が得意な人、塗りが得意な人、背景が得意な人と、イラストの制作過程ごとに作業を分担することが可能になりました。各クリエイターはグループチャット形式で結ばれ、クリエイター同士の意思疎通もできる状態をつくっています。

- 立ち上げからわずか2年、現在の状況は?

現在、約1万3,000人のクリエイターが登録しています。『MUGENUP』では、単に登録しているのではなく、それぞれのクリエイターはどんな傾向が得意で、工程中のどの作業を、どのくらいの時間でできるのかといった情報を管理しています。社内のスタッフがクリエイティブワークを支える役割を担い、クライアントの好みやオーダーの緊急度に応じて、クリエイターを配置し、各作業状態の確認・修正などをします。『MUGENUP』開発の一翼を支えているのが、クリエイティブ・ディレクター経験者ですし、社内スタッフの7割は美大出身の女性です。個々のクリエイターについて通常の作業時間が把握できているので、作業時間を大幅にオーバーして納品がされない場合は、アラートが機能します。必要に応じて、複数のクリエイターを投入したり、メンバーを変更することが可能で、サービス開始以来、高い納期達成率で、クライアントから大変喜ばれています。一方、クリエイターは、例えば線画担当でスタートしても、その他の作業と連携していることで学びの機会を得られ、スキル認定されれば、作業の範囲を広げていくことも可能です。

- 立ち上げの経緯を教えてください。

高校時代はアパレル業界に興味があり、店舗経営やブランドの立ち上げを考えていました。アルバイト先で、そのためには大学で学ぶことも必要と諭されたことから経営学部に進学しましたが、授業を受けるだけでは経営は身に付かないと気づき、学生にできるビジネスを考えて、2つの事業を経験しました。人・物・金など何もない学生にもできるビジネスといえば、イベント事業とIT事業の2つです。まずイベント事業を立ち上げてみて、自分には向かないと判断、次にITサービスの提供を試みました。僕は1986年生まれです。学生時代にITの洗礼を受けてITに夢中になった「76(ナナロク)」世代(1976年生まれ)と異なり、ITはあって当たり前と冷めている世代で、単純にITなら元手がなくてもできるという意識でした。新卒で三井住友銀行に入行。銀行なら大小さまざまな規模の事業を俯瞰して見られるという思いがありました。実際、個人や法人、成功・不成功を問わず、ファイナンスや人事、採用など、企業の実態がよくわかりました。しかし、学生時代に起業した同世代の人々が経済紙等に、「時の人」として取り上げられているのを見ると、「このままではいられない」という思いに駆られ、1年で退社、起業を志しました。

起業した2011年はFacebookが話題になった年でした。Facebook用のアプリをつくるもまったく売れず、売り上げは半年でわずかに8万円。サービスプロダクトをつくっては、起業志願者向けの大会に出たり、ベンチャーキャピタルを訪ねたりしながら、受託の仕事をしていましたが、収入は微々たるものでした。そうこうしているうちにメンバーは3人に。「ゲームをつくると儲かるらしい」という話を聞き込み、連日、朝8時にカフェに集まっては協議を重ね、3人で2本のゲームをつくりました。楽しかったけど、売れませんでしたね(笑)。しかし、この経験が『MUGENUP』につながりました。

- 今後の展開は何を考えていますか?

アニメ、漫画、ゲームというコンテンツの裏側を支えているのは、これらが超好きでクリエイティブを仕事にしたいという人達です。仕組み化を進めることで、労働集約型の仕事をホワイトカラー化したいと考えています。社内文化としても、「無理無駄を省く」ことを、現場で考え変えていくことが大切だとしています。数字で測定してマネジメントする体制です。制作のマニュアル化も進めてきましたが、一方で思考が硬直化するのは避けるべきです。どんどん発想して1カ月単位で結果を測定、柔軟に変化していくことも重要だと考えています。

今年(2013年)9月に中国語・英語サイトを開設、グローバル展開もスタートしました。ビジュアルコンテンツなので言語に依存せず、国境がありません。内部に翻訳者を置いて、多国籍の人々による協働作業が始まっています。また、今後はイラスト・クリエイターのパブリッシングを企図していきます。既にワークそのものがスクールの機能を併せ持っているので、ここからイラストレーターを個人名で売り出す、ブランド化するというイメージです。エコ・システムですよね。僕自身は、右脳で考えることを左脳で数値化するような発想に事業のヒントを求めています。

- 座右の銘は?

「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の「三方良し」です。
『MUGENUP』の仕組みが、多くの人の生活を支えていると思うと、近江商人の心得「三方良し」で事業を展開していくことの必要性と責任を痛感しています。人には「向き・不向き」がありますが、それは「やりたい・やりたくない」という意識に起因します。「やりたいことをやるのが人生」ですから、その人に向いた仕事を探すことも代表の大切な仕事だと考えています。