“リアルとネットの壁を壊して新たなバリューを創りだす”

株式会社ペイジェント
代表取締役社長
上林靖史

インタビュー: 2014/06/27

東京大学法学部卒業後、旧日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)に入社し、ネット・メディア企業への投資銀行業務や経営企画などを経験。2006年秋に旧株式会社インデックス・ホールディングスを経て、2008年秋に株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)に入社。経営企画などに携わる。2012年5月にはDeNAのグループ会社である株式会社ペイジェントの代表取締役社長に就任。ネット決済の領域で新たなバリューを生みだすことに日々尽力している。

生年月日:
1967年
出身:
兵庫県
出身校:
東京大学

- ネットビジネスに興味をもちはじめた経緯とは?

大学卒業後、入社したのが旧日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)で金融の世界に入り、15年勤務していました。合併によって同期が100名強から1千人を超えるような大規模な母体へと変化し、コンテンツ系や放送局、ITネットやメディア企業との仕事が増えて、こういった世界もおもしろいなと思ったことがきっかけですね。ちょうど2002年からの数年で、携帯が2Gから2.5G、3Gとドンドン進化していく過程も見たため、モバイルビジネスがこれからのカギなるだろうと確信し、携帯電話事業会社(キャリア)、端末メーカー、モバイルコンテンツ制作会社の3つで転職を考えるようになりました。

- 結果、モバイルコンテンツ制作会社に転職を決めた理由とは?

まず、大規模な組織で働くことにそれほど魅力を感じなくなっていたのでキャリア関連の会社は違うなと思いました。端末メーカーも理系ではないので厳しいと判断し、自分でもやれるかなと思ったコンテンツ制作会社に転職しました。そこで最初は新規ビジネスの立ち上げを、後半は一転して事業アセットの整理を行い、その後、DeNAへ転職しました。

- DeNAへ入社されるまで少し期間があったそうですが?

そうですね。2ヶ月ほど働かずに、ぼーっと過ごしていたことがあります。そのうちハローワークを勧められたりして、このまま社会復帰できないんじゃないかと自分自身で思いはじめ、やっと本当の焦りを感じるようになりました(笑)。そんな折り、中学時代からの友人の紹介でDeNAのメンバーと会う機会があって、経営企画の取りまとめを行う人材として2009年1月に入社しました。そこで本部長を務め、2012年5月にECサイト決済代行サービスを行うDeNAの子会社の株式会社ペイジェントの社長に就任する運びとなったんです。

- 社長に就任され、もっとも変わった点とは?

やはり、背負うものでしょうね。経営企画の時も会社を背負うという意識はあったのですが、やはり事業を営むなかでの背負うものとは質が違います。お客様や社員、会社について、しかも今だけでなく将来のことまで考えていかなければなりませんからね。我々の業務は決済だからこそ、加盟店様にどれだけのバリューを感じていただけるかと共に、利用するエンドユーザーの皆様にも同じくサービスの価値を感じていただかなくてはいけません。決済代行業務は、加盟店様、エンドユーザー、それを支えるクレジット会社などのプレーヤーが多い業種であり、「面」のビジネスなので多数に使われてバリューが生まれる。それぞれのバランスをどう上手くとって「広まり」を作るかが、重要になります。そして我々は、加盟店様とカード会社の間のレイヤーに存在するので、この両社の間の膨大なトランザクションをどれだけ正確かつスピーディに実行するかというオペレーションエクセレンス(生産性ともいいます)が、とても大切なんです。いずれにしても、各種関係者とのバランスをとりながら、社員一人ひとりが自分達の提供するサービスのバリューを磨き、高められるように仕向けること、これが社長の役目の1つです。もう1つは、「面」を塗りかえられるような新しい決済に関わるサービスは何か、これを社員と共に考えながらケミストリーを起こす場作りも大切だと感じています。

- ECサイト決済代行サービスにおける御社のポジショニングとは?

当社は2006年に三菱東京UFJ銀行と農林中央金庫のジョイントベンチャー企業としてスタートしましたが、決済代行サービスそのものは90年代からやっている会社が数多くあり、当社は後発の参入組なのです。決済サービスというのは、毎年業者を見直したりというものではないため、ディスアドバンテージな部分でした。よって主力の物販のみならず、チケットやサービスの提供がネット化しているので、そういうサービスと合うようさまざまな決済手段を増やし、ネットシステムを再構築する。そこで巻き返しを図り、新たなニーズを掘り起こし、市場においての当社の価値を高めています。

- オペレーションエクセレンスのための施策とは?

当社の母体でもあるDeNAように、テレビCMを打ったらすぐにユーザーが増えて売上につながるという業種ではないのが、決済代行業の難しいところです。マージンは多くないのですが、それが将来に向かって積みあがっていく累計結果が得られるものであるからこそ、費用対効果が判明するまでにタイムラグがある。そのため、施策の際の仮説出しがとても大切であり、直ぐにチューニングする部分とすぐに結果を求めず長い目でみていく部分の両方を意識して進めることが、オペレーションエクセレンスの鍵となります。それと、プレーヤーがレイヤーに分かれてしまっていることから、オペレーションエクセレンスを追求しているつもりが実は小さいレイヤーの中で留まってしまっていることもままあり、レイヤー同士を融合することでオペレーションエクセレンスの質を抜本的に換えることも意識しています。これは、JVの組み換え(DeNAと三菱UFJニコスさんとの50:50に組み替え)で狙うことの1つですね。

- 決済代行業の今後について、どうお考えですか?

リアルな個人消費に関わるお金の動きは、約250兆円あるのに対して、ネット決済は9兆円の市場。ネット決済代行業としては、その差額は大きなポテンシャルを感じるところです。今や支払いに関して、ネットだ、リアルだといっているのは、むしろ我々のような業者の方。一般ユーザーの消費行動は、ネットとリアルを線引きしなくなってきているので、事業者サイドのこの壁を事業者自身で壊すところにチャンスがあると考えています。そしてネットの力により、従来型の決済手段に囚われないフィールドもできてくると予測しています。従来の決済代行業務はB to Cの分野が中心となっていますが、スモールBの世界の資金流、C2Cの商流が生む決済など、まだまだネット決済のフィールドは広く、ますますおもしろくなるであろう業界。グローバル化も十分、あり得る世界だと思います。フィールドの大きさがある日本で、ガラパゴスでないシンプルな決済サービスを産みだせれば、それは海外にも必ずつながるでしょう。

- いつかベンチャー企業を立ち上げたい方にひと言お願いします

会社とは、「作るヒト」「売るヒト」「数えるヒト」のチームワークとポジティブループが大切だと思います。新しい商品やサービスを作れるヒト、その魅力を的確にクライアントへ伝えられるヒト、そして作り出す工程から売る工程・運用する工程を一貫して定量的に分析するヒトの3要素です。この3要素が相互に絡み、ポジティブループを生み出すことに集中しているチームは成功をぐっと引き寄せることになるでしょうね。この3要素を備えたチームは、どんどんトライし、矛盾が生じた時にはとことん考えて、よりよい形を模索してアウトプットを出せるはずだと思います。私の座右の銘は「I am the captain of my soul」で、これはネルソン・マンデラ氏の言葉です。決済代行業のみならず、ネットビジネスを初めとした全てにおいて、めまぐるしく変化を続ける世界ですが、だからこそ環境の変化に応じてピボットしつつ、ピボットする際の軸足を常に持ち、翻弄されそうな時こそ自分を見失わず、自分の意思で考え、信じた道を進んでいきたいという思いでこの言葉が好きになりました。