“世界を変える、新たな価値を生み出す”

Sansan株式会社
代表取締役社長
寺田親弘

インタビュー: 2014/07/18

99年に三井物産株式会社に入社。情報管理部門を経て、米国シリコンバレー勤務時代には米国最先端ベンチャーの日本向けビジネス展開を担当。2007年にSansan株式会社を設立。世界初の法人向け名刺管理サービス「Sansan」 をスタートさせ、2012年には個人向け無料名刺管理アプリ「Eight」 を開始。優れた起業家に贈られる「The Entrepreneurs Awards Japan U.S. Ambassador's Award」を受賞している。(2011年)

生年月日:
1976年
出身:
東京都
出身校:
慶応義塾大学環境情報学部

- 御社の名刺管理サービスについて教えてください

ビジネスマンは日々名刺交換を行い、多くの人がその管理に追われています。そこで、大量の名刺をクラウド上で組織単位での共有・管理をすることで、営業管理、顧客管理などに活かし、企業の営業を強くする法人向け名刺管理サービス「Sansan」を提供しています。これまで、上場企業からベンチャー起業まで2000社を超える企業の方々にご利用いただいており、2年連続シェアNo.1を記録しました。一方、個人向けの名刺管理サービス「Eight」では、スマホアプリで撮影した名刺を無料で正確にデータ化し、さらにユーザー同士がオンライン上で“つながる”ことで名刺帳の情報を常に最新に保ちます。名刺を切り口に新たなビジネスネットワークの構築を目指し、現在ユーザー数は50万人、総名刺登録数は2000万枚にのぼります。(取材時点)

- 名刺管理サービスのアイデアはどこから?

大学卒業後、商社に入社して働くなかで、自分自身が困ったことがアイデアの発端です。まず、紙の名刺を管理する作業は手間がかかること。次に、組織の人脈が共有されていないと営業活動が非効率になると感じたこと。実際、ある企業に新規でアプローチをかけようと試行錯誤して、なんとかコンタクトをとってみると「三井物産ならAさんをよく知っていますよ」なんて話になったことがあります。もちろんAさんもそのつながりを隠していたわけではなく、自分がその情報へアクセスする手段がないために、結果として見えない情報、見えない人脈となり、ビジネスに活かしきれていなかったのです。これらの課題を名刺をデータベース化し、ネットワークを通じて社内で共有・可視化すれば解決できると考えました。

- もともと起業には興味をおもちでしたか?

起業については、小学生ぐらいから考えていました。もともと戦国時代の本が好きで、「戦いに勝って天下をとるシステムというのはなかなかいいな。これを現代で置き換えるなら起業だな」と思ったのです。また、父が経営者だったこともあり、家族で旅館に泊まっても、館内のようすを見たり、仲居さんにちょっと質問したり、その断片的な情報から「ここの売上はだいたいいくらぐらいで、これぐらいの利益が出ていて…」なんて話をするわけです。幼い頃からそういう話を聞くのが当たり前だったので、自然にビジネスの視点で世の中をみるようになっていたことも、影響しているのかもしれません。

- アメリカと日本の起業の違いについてどう感じていますか?

シリコンバレー駐在時代、1年で100社のベンチャー企業を回るような毎日を送っていました。その時、気づいた違いを例えるならプレゼンの時でしょうか。アメリカのベンチャー企業は30分与えられたら25分は自分たちが世界をどう変えるかといったコンセプトを語り、残りの5分で商品の説明をします。しかも、どんなものかちょっと見せて、と問うとほとんどが「商品はこれからつくる」と言う。この話を日本ですると笑い話になってしまうのですが、彼らはまずビジョンありきなのです。一方で、日本で多いパターンはまず自分たちの技術がどれだけ優れているのかを大いに語る。で、それは何に役立つの?と尋ねると「それはこれから考える」と言う。どちらがいい、悪いという話ではありませんが、それだけ起業に対する考え方の素地が違うということでしょうね。

- 御社のビジョンについて教えてください

よく会社のビジョンを語るとなると、経営哲学を語り、会社をどれだけ大きく成長させるかについて語る方もいますが、これはちょっと違うかなと感じています。Sansanにとってのビジョンとは、会社を大きくすることが目的ではなく、世の中に対してどれだけ価値あるバリューを提供できるかだと考えています。後年、"あの時Sansanがいたからこのイノベーションが生まれた"といわれるサービスを創りたい、そんな風に思っています。例えば、Googleのミッションは「世界中の情報を整理する」ですが、実際に提供しているサービスは「検索サービス」です。自分たちが目指すミッションと提供するバリューは一見、違うもののようにもみえますが、つきつめていくと表裏一体の関係なのがわかります。我々のミッションは、「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」こと。そのために提供しているバリューが名刺管理サービスです。

- 名刺管理サービスの今後について教えてください

2つのチャレンジを考えています。ひとつは、アメリカマーケットへの進出。日本のみならず、世界のビジネスシーンで我々のサービスを展開したいと思っています。もうひとつは、名刺管理サービスを当たり前のサービスにすること。たとえば、今の若者はケイタイやパソコンをみて「とても便利なもの」なんて思わないはずです。それは、毎日の生活の中にあるのが当たり前だから。名刺管理サービスもいつか、そんな当たり前の存在となり、やがては紙の名刺そのものを再定義するサービスにしたいと考えています。紙の名刺はやがて消え、お互いにスマホのデータを介して情報を交換するようになる時代が来るかもしれない。その情報を管理してネットワークで結び、ビジネスに活かすという働き方が当たり前になっている世の中が我々の目指すところです。

- ご自身の夢について教えてください

ITビジネスを丸7年行っていますが、この事業を社会に定着させることができたらそれは人に任せて、私自身はもう一つ、異なる分野でイノベーションを起こしたいと考えています。いずれにしても、自分にしかできない価値ある事業を展開していきたいですね。

- 御社はユニークな働き方を取り入れていますよね

そうですね。在宅勤務制度「イエーイ」や、平日と土日を振り替えて勤務できる「どに~ちょ」という制度があります。ただこれも、働きやすい環境をつくるとか、女性の社会進出をサポートするためというのがスタートではなく、社内の課題を解決して、仕事の生産性をあげるために考えだされ、その結果としていろいろな働き方を提案することにつながっているということです。2010年に徳島県に開設したサテライトオフィス「神山ラボ」もそのひとつ。当初はエンジニアの生産性向上のために設けた場所でしたが、今では現地に常駐してリモートワークを行う社員がいたり、エンジニア以外でもWeb会議システムを利用しオンラインで営業や顧客サポート業務を行ったり、多様な業務を行っています。

- どんな人と働きたいと思いますか?

私の座右の銘は「挑戦と創造」なのですが、これは古巣の会社である三井物産の社是にある言葉です。挑戦とはリスクをとること、創造とは世の中になかったものや価値を生みだすこと。起業して自分でビジネスをするうえで重要なことですが、いずれもパワーが必要です。そのため、仕事を一緒にやりたいと思うのは「決断できる人」。自分の頭でしっかり考えてジャッジを下せる能力を持っている人がいいですね。仕事や職場の条件で「判断」するのではなくて、自分がここSansanで勝負しようと「決断」して入社してきてほしいと思います。

- 志があれば、起業はするべきだと思われますか?

目標があって起業したいならやるべきですが、その目標というのが偉大な会社をつくることか、偉大な価値を生みだすことのどちらなのかは整理しておいた方がいいと思います。何度も言うように、私自身は後者。社会にどんなバリューを提供できるかが、Sansanの存在意義だと考えているので、常にそこに立ち返って考えるようにしています。また、何かやりたいけれどそれがみつからないという場合は、日頃課題に感じていること、その課題を解決できる方法はないか、自分の足元から考えてみることが近道だと思います。「これから伸びる領域はないか」とむやみにどこかを探し回るのではなく、今、目の前の課題と対峙してみてはいかがでしょう。

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