“あらゆる身近なエネルギーでクリーン&エコな発電を追求”

株式会社音力発電
代表取締役
速水浩平

インタビュー: 2014/08/01

慶應義塾大学環境情報学部卒業。大学在学中の2003年より音力・振動力発電の研究開発に取り組み、同大学大学院政策・メディア研究科に進学後、2006年に株式会社音力発電を設立。人や車の移動時に発生する振動エネルギーによって発電する「発電床®」をはじめ、生活の中にある利用されていないエネルギーを有効活用した独自の製品開発を行う。

生年月日:
1981年
出身:
栃木県
出身校:
慶応義塾大学

- 音や振動の力で発電するというアイディアはいつからお持ちだったのですか?

子どもの頃からいろいろなことに興味を持ち、課題に対してどう解決するかをいつも考えているような、発明好きな少年でした。物心ついた頃から「発明ノート」をつけていたほどです。社名にもなっている「音力発電」のヒントになったのは、小学校の時の理科の授業。発電機とモーターの関係について習い、モーターは電気で動くけれど、逆にそのモーターを回して発電することもできると知りました。その時、「同じことがスピーカーにも言えるのではないか」と思ったのです。スピーカーは電気を使って音を出しますが、逆に音をスピーカーに伝えることで発電することはできないだろうかと。子どもの頃のそのアイディアが、現在に至る一つのきっかけになっています。

- 起業を目指されたきっかけは?

進路について考えていた高校2年生の時、アメリカの「大学発ベンチャー」についての報道に触れ、起業を意識するようになりました。そして自分も大学発ベンチャーを目指したいと考え、当時その分野で国内のさきがけ的な存在であった慶応義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)に進学。大学2年の頃から音力発電の研究を本格的にスタートさせ、3年生になると個人事業主として企業からの受託研究の仕事を受けるようになりました。そして技術面でもビジネスとしても自信がついた大学院進学後の2006年、株式会社音力発電を設立したというわけです。

- 目指すビジョンについてお聞かせください

世の中には、使われていない、無駄に捨てられているエネルギーがたくさんあります。たとえば人が歩くときに床に起こる振動や、車が走るときの音。このような普段意識されていない、むしろ迷惑に思われているようなエネルギーを有効に使うことができれば、社会にとって大きなプラスになるはずです。この当社のコンセプトを端的にあらわしているのが、「エネルギーハーベスティング」という考え方。音や振動をはじめ、水力、風力、太陽光、温度差など身のまわりのエネルギーを「ハーベスト=刈り取る」。このコンセプトのもと研究開発から製造、販売まで総合的に手掛け、トップランナー企業として新たなライフスタイルの提案を目指しています。

- 身のまわりのエネルギーがどのように活用できるのですか?

音や振動などのエネルギーの特徴は「どこにでもある」ということ。一つひとつの発電力は小さいものの、使いたい時に使いたいだけ発電する「地産地消」の発電が可能になります。たとえば当社が手掛ける「振力電池®」という製品がありますが、これは人が指でボタンを押した時の振動を利用して発電を行う小型ユニットです。また、工場からの排熱を機械の稼働チェックシステムに活用することもできます。最近ではLED照明に代表されるような消費電力の少ない電気機器が多くなり、当社の考えるエネルギーハーベスティングの可能性も広がってきました。

- クリーンエネルギーを生み出すことにもつながりますね

地球温暖化の原因であるCO2排出量削減のため、かつてはチーム・マイナス6%、現在はチャレンジ25キャンペーンが推進されています。しかしこれらの削減目標の基準となる1990年に比べ、現在はパソコンやスマートフォンなどの電気機器が広く普及し、どうしても一人あたりの消費エネルギーは多くなってしまいます。一方で、生活や経済の活性化のためには新たな電気機器やサービスは欠かすことができません。エネルギーハーベスティングは、そういった経済と環境問題が抱える負のスパイラルを経ち切る選択肢の一つになり得ると考えています。時代とともに進化する電気機器やサービスに、既存の電力ではなくこれまで利用されてこなかったエネルギーを活用することで、環境問題改善にもつなげられるのではないでしょうか。

- 製品化までにはご苦労も多かったのではないですか?

研究成果を製品化するまでには、基礎研究、試作、量産化、とそれぞれの段階があり、必要なプロセスも全く異なります。これまでにない全く新しい技術であるがゆえに、試作品の製造を委託先の工場に依頼するためのやりとり一つとっても色々な苦労がありました。もちろん、研究開発でうまくいかなかったことも多いですよ。ただ私はそれを失敗だとは思っていません。学生の頃から私が目指していたのは、人の真似ではないオリジナルの製品を開発すること。オリジナルの研究開発というのは、少し大げさに言えば、自分だけが知っている世界最先端の技術です。その研究の中で繰り返す失敗は、正解に向けてどんどん選択肢を絞り込んでいっている状態。ですから、一般的に失敗や苦労といわれるものも、私にとっては新しいものを生み出す過程での醍醐味なんです。

- 海外展開についてはどのようにお考えですか?

エネルギーハーベスティングは元々ヨーロッパなどを中心に生まれた考え方で、近年ようやく日本でも認知されるようになってきました。しかし、このエネルギーハーベスティングを本当に必要としているのは、実は途上国なのではないかと考えています。世界には、電力のインフラが整備されておらず、安定した電力供給が受けられない国や地域があります。そのような場合でも、たとえば当社の「発電床®」の技術を使うことによって、大規模な発電施設や送電システムを作らずとも夜間や停電時の安全対策ができます。現在は東南アジアや南米を中心に調査を進めながら、当社が考えるエネルギーハーベスティングのさらなる可能性を模索しています。

- 社内で大切にしている考え方はありますか?

よく話しているのは「好きなことを仕事にする」ということ。研究開発の過程はうまくいかないことの繰り返しです。成果が全然出ない時期が続いて、ちょっと良くなったと思ったら、またうまくいかなくて…。でも続けるうちにある時ブレイクスルーが訪れ、それを繰り返すことで徐々に良いものが生まれてきます。要は、うまくいかない時期をどう乗り越えるかなんです。私はこの研究が好きですし、大変なことがあっても「嫌だ」「つらい」と思ったことは一度もありません。むしろ、状況が難しければ難しいほど面白いと感じるんです。もちろん仕事ですから、好きなことだけしていればいい訳ではありませんが、社員にも常に「好きなことを仕事にしている」という思いを持っていてほしいと願っています。ですから、社内から「この技術を使ってこんなことをやってみたい」という提案が出た時は、よほどのことがない限り積極的に採用するようにしています。「この会社に入ってよかった」「好きなことができている」と感じられるように、会社としてもできるだけのサポートをしていくつもりです。

- 起業を志す人へ一言お願いします

私は正直、興味があるなら積極的にどんどん起業した方がいい、とは思っていません。会社を興すというのは、やはり大変なことです。ただ、覚悟や情熱を持っているのであれば、絶対にやったほうがいいと思います。覚悟と情熱は表裏一体。強い情熱があれば「どんなことがあっても乗り越える」という覚悟につながるはずです。

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