“ユーザー課金のビジネスモデルでサービスの流通を創造する”

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長
白石徳生

インタビュー: 2014/08/08

拓殖大学政経学部を卒業後、1年間の渡米を経て、株式会社パソナジャパン(当時)入社。1996年にパソナグループの社内ベンチャー制度第1号として株式会社ビジネス・コープを設立し、福利厚生のアウトソーシングサービスを開始。2001年、株式会社ベネフィット・ワンに商号変更。「サービスの流通創造」を目指し、福利厚生サービスをはじめ、インセンティブ、CRM、BTM(出張支援サービス)、ヘルスケアなどさまざまな事業を展開する。

生年月日:
1967年
出身:
東京都
出身校:
拓殖大学

- いつ頃から起業を考えるようになったのですか?

会社を経営していた両親をはじめ、親戚も皆自分で事業を興した人ばかり。周りにほとんどサラリーマンがいないという環境に育ったせいか、小さい頃から自然と「将来は起業しよう」と考えるようになりました。学生時代も不思議と同じように起業を志す友人たちが多く、当時から音楽テープの輸入販売をしたり、学生向けのツアーを企画したりと、ビジネスを始めていました。卒業後は就職せず、ビジネスのヒントを探すためにアメリカへ。そこで、知人の縁もあって現地のパソナで働くようになりました。

- 会社設立の経緯をお聞かせください

アメリカから帰国後、実は一度ビジネスを立ち上げているのです。それは車用品のセキュリティビジネスだったのですが、本格的な事業化を前に撤退。アメリカに戻ろうと考えていた時に、パソナグループから声をかけてもらい、株式会社パソナジャパン(当時)に入社しました。それまでずっと起業を目指して活動していましたから、サラリーマンになることは自分の中で想定外でしたね。そして入社後の28歳の時、社内ベンチャー制度がスタート。そこに応募した案が一位となり、ベネフィット・ワンを設立したというわけです。

- 目指すビジョンについてお聞かせください

「サービスの流通を創造する」。これが、創業から一貫した当社のビジョンです。今の時代、モノの流通は産業としても成熟しており、日本全国、あるいは世界中どこからでもモノが買える世の中になっています。ところが、サービスの流通というのはほとんど存在せず、製造と流通が同時に行われているのが現状。唯一の例外が旅行業で、航空会社のようにサービスを提供する会社と、その流通を担う旅行代理店が存在します。流通には「物流・決済・情報提供」の3つの機能があって、サービスの場合、物流は必要ありませんし、決済機能はモノもサービスも同じ。重要なのは、3つ目の情報提供機能です。たとえば、モノの流通の場合。お店に行けばさまざまな商品が売り場に並び、そこで比較検討することができますがサービスにはそれができない。そのために何が起こるかというと、広告宣伝費を多くかけたもの、つまり高いものほど売れる、という状況になってしまっているのです。モノの世界では「安くて良い商品が売れる」というのは当たり前なのに、サービスではそれがない。サービスの流通が発達し、消費者がきちんと比較検討できる仕組みをつくることが、サービス業の健全な発達にもつながると私たちは考えています。

- 福利厚生のアウトソーシングというアイディアはどこから?

たとえば、飲食業における「ぐるなび」など、インターネットの世界ではいくつかのサービスの流通を担っている存在があります。しかし、それらと当社の大きな違いは、サービス提供側から広告費をもらわずに、ユーザーから会費をいただく会員制度をとっていること。それによって、中立な視点でより良いサービスを選択することができます。とはいえ、一般のユーザーから会費を集めるのはなかなか難しいもの。そこで着目したのが企業の福利厚生です。企業が福利厚生にかける予算を会費として支払ってもらい、会社単位で会員を増やす。スケールメリットによるディスカウントが実現できるわけです。ですから福利厚生というのはあくまで手段であって、目的ではありません。

- 今後の事業展開についてはどのようにお考えですか?

現在の主力事業である福利厚生のアウトソーシング以外にも、企業の顧客サービスのためのCRM事業や個人を対象としたパーソナル事業など、現在8つの事業部を展開しています。今後は金融サービスなどにも事業を拡大し、さらなるサービスの流通の仕組み作りを進めていきたいですね。それと同時に会員数を拡大し、利便性の向上や比較検討のしやすさなどの付加価値にも力を注いでいきます。たとえばミシュランの“星”や口コミのような、サービス格付けのシステムを作り、飲食、医療、育児などあらゆるサービスを比較検討して選択できるよう現在準備を進めている最中です。またグローバル展開も視野に入れ、今後は国内で培った流通サービスの仕組みを海外でも展開していこうと考えています。

- 失敗した経験も多かったのでは?

そうですね。でも、どんなことにも後悔はありません。後悔するのは、物事を振り返った時に「あの時こうしていればよかった」と思うからですよね。しかし、思いつく限りの方法を全てトライして、100%ベストを尽くしたのであれば、たとえそれが失敗に終わっても後悔することはないはず。「後悔しない」という言葉は、「どんなことにも全力を尽くす」ということとイコールであり、創業当時からの当社における約束事ともいえるものでその“約束”を守れなかった時には、「後悔」という非常に残酷なペナルティが課せられることになるのです。

- 社内で大切にしている価値観とは?

大切なのは「思い、共有、アクション」の3ステップ。思いというのは、つまり私たちのビジョン。まずはそのビジョンを実現しようという強い思いを持つことです。ただ、一人の人間の力でできることには限りがありますから、思いを共有し、仲間を増やしていく作業が必要になります。そして、思っているだけでは何も起きません。共有した思い、ビジョンを行動に変えていかなければいけないのです。「サービスの流通を創る」というビジョンに向け、とるべき行動はシンプルかつ明確。会員企業を獲得する、サプライヤーを増やす、サービス格付けのための企画を進める、システムを開発する、等々。思いを共有し行動に移す、しかもスピーディに、という風土があると思いますね。

- 日頃大切にしている言葉はありますか?

「日々努力、日々反省」。反省というのは自分を客観視しないとできない行為です。人は意外と自分自身のことはわかっていないもの。特に成功したりうまくいっている時ほどそうです。一日の出来事や自分の行動を振り返り、至らなかった点を反省し、改善のために努力していく。常に前進を続けるためには、それがとても大切なことだと思います。本来の努力家や反省能力の高い人というのは、それが自然にできると思うんですよ。私はもともと楽観的な性格なので、自分への戒めとして意識するようにしています。意識していないと忘れてしまいますから。逆にいうと、そこが私の一番の弱点なのかもしれませんね。

- 起業を志す方へのメッセージをお願いします

とにかく行動がすべて。行動を起こさないと次のステップに進むこともできません。一番よくないのは、ただひたすら考えているだけの人です。どれだけ頭の中でシミュレーションを繰り返しても、実際にやってみると、絶対に想定とは違うことが起こります。大切なのは、まずやってみるということ。あとは、世の中はとても平等だということを頭に置いていてほしいですね。たとえ状況が不利だと思っても、世の中というのは面白いように、不利なことの裏には必ず有利なことがあります。わかりやすいたとえでいうと、よく「日本は起業家にとって不利な環境だ」といわれますが、それは裏を返せば、ライバルが少なくて有利だということ。だからこそ、置かれている環境に悩んでいる暇があったら、とにかく行動するべきだと思います。

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