“自治体に新たな収益を創出し「財源確保」で地域活性化へ”

株式会社ホープ
代表取締役社長
時津孝康

インタビュー: 2014/09/05

福岡大学在学中に有限会社ホープ・キャピタルを設立。自治体の広報紙やホームページ等の有料広告事業を中心に収益化をはかる新たなビジネスモデルを展開する。2009年に株式会社ホープへ組織変更。拠点である九州のみならず、全国の自治体の「財源確保」を支援し、地域経済の活性化を目指す。

生年月日:
1981年
出身:
福岡県
出身校:
福岡大学

- いつ頃から起業をお考えだったのですか?

父が商売人だったこともあり、小さい頃から、将来自分がスーツを着てサラリーマンになるというイメージが全くありませんでした。大学生になって進路を考えた時にも、「このまま就職して社会人になるのはつまらない」と、1年間アメリカに留学することに。この留学が現在のビジネスにつながる数多くの出会いを生み、私の人生にとって大きなターニングポイントになりました。

- ビジネスモデルのヒントはどこから?

留学中に知り合った友人が帰国後、自治体にある提案を行いました。その提案とは、高速道路の高架下をフットサル競技場として活用しようというものです。紆余曲折を経て最終的にその提案は採用され、空き地がフットサル場として運営されることになりました。その経緯を間近で見ていた私は「こんなことができるんだ」という衝撃とともに大きなヒントを得たのです。自治体にとっては余っていた土地を活用することで賃借料が入り、地域の活性化にもつながります。当時の私は、起業を志してはいたものの特別な知識や技術があるわけでもなく、相当大きな変化が必要とされるマーケットでないと勝負できないだろうと考えていました。多くの地方自治体は、財政難をはじめとした様々な課題を抱えています。それらの課題を解決することでビジネスにつなげることができるのではないかと瞬間的に確信し、大学卒業直前の2005年2月に起業したというわけです。

- 事業内容についてお聞かせください

全国の自治体の財源確保に特化した総合サービス事業を展開しています。わかりやすくいうと、自治体に特化した広告代理店のようなイメージですね。今はどこの自治体でもホームページを開設していますし、広報紙も発行しています。ほかにも役所の中のデッドスペースなど、活用できる場所はたくさんあります。そういった場所への有料広告の掲載を通じたマネタイズのご提案をしています。

- 行政機関は前例を重視する傾向がありますから当初はご苦労も多かったのでは?

近隣エリアのほぼすべての自治体を回りましたが、創業から1年8ヶ月は全く契約のない状態が続きました。アルバイトでどうにか食い繋ぎながらひたすら営業に回る、もうどちらが本業なのか分からないような日々でしたね。そもそも行政機関というのはリスクテイクを嫌うものです。それが、どこの誰とも知れないベンチャー企業と仕事をするなんて、一般的には考えられないこと。「現実の壁はこんなにも厚いのか」と打ちのめされる思いでした。

- そんな状況を打破したきっかけは何だったのですか?

どこの自治体にも相手にされない状態が続き、それでも「できる」と信じて通い続けました。初めての契約のことは今でも鮮明に覚えています。福岡県の太宰府市役所の広報紙でした。「広告枠を設けることで年間これだけの収入が確保できます」という提案をずっとしていたのですが、それを初めて受け入れてもらえたんです。もしかすると、ひたすら通い詰める私のことがかわいそうになったのかもしれません(笑)。自治体の広報誌に広告が掲載されるというのは私にとっても革命的な出来事でしたし、出稿主からも大変好評で、地域での話題性もありました。そこからは一気に状況が上向きになり、それまで消極的だった他の自治体からも、続々と契約をいただけるようになりました。

- 今後のビジョンについてお聞かせください

自治体の財源確保は、「自治体を通じて人々に新たな価値を提供し、会社及び社員の成長を追求する」という私たちの企業理念にも通じるものです。自治体にお金を還流することで、そこに暮らす人々の笑顔や幸せにつなげることができる。その手段として現在は広告事業を主力としていますが、おそらく将来的には、他にも柱となる事業をいくつか展開していくようになると思います。収入の大部分を税金に頼る地方自治体では、人口の減少などの影響により、今後ますます作業の効率化やコストダウンが求められるでしょう。それに伴ってアウトソーシングの必要性も高まると考えられます。そういった部分で当社がお手伝いできる部分を事業として拡大していきたいと考えています。自治体にお金が流れれば地域の経済も活性化します。その結果、治安の向上や人口増加、雇用の創出といった付加価値の提供につながればという思いもありますね。私の尊敬する経営者の一人がファーストリテイリングの柳井正会長ですが、ユニクロ商品のタグには山口市の住所が記載されています。そこに、柳井氏の地元に対する思いをすごく感じるんです。少し偉そうに聞こえるかもしれませんが、私も、「地方における圧倒的な成功体験を作り上げる」というのを自身の30代におけるテーマとしています。

- 社内にはユニークな制度も多いようですね

どんなに理念を掲げても、私一人では実現することはできません。創業から10年目を迎え社員数も増えましたが、私にとっては“仲間”という意識が強いんです。仲間として出会った縁を大切に、一人ひとりが幸せであってほしいと願い、それを社内制度という形にしています。家族の誕生日に休暇をとるファミリーバースデー制度や、子どもが2歳になるまで支給されるオムツ手当などもその一つ。他にも、スキルアップに必要な本を会社負担で好きなだけ購入できる「ブックデー」を設けたりしています。

- 日頃大切にしている言葉があれば教えてください

以前祖父から教わった「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉。どれだけ成功をおさめたとしても謙虚な人間でいたいと強く思っています。実際には難しいことかもしれませんが、だからこそ大切にしている言葉ですね。もう一つは、「思考は現実化する」ということ。何事にも具体的なイメージを持つ、というのを日頃から意識するようにしています。

- 起業を志す方へのメッセージをお願いします

私も実際に「起業したい」という相談を受けることがよくあります。そんな時にいつも言うのは「さっさとやればいい」ということ。私は大学卒業とほぼ同時に起業しましたが、それは、就職してしまうとその状況に甘えてしまうだろうと考えたからです。年齢が若いほどリスクを取ることができますし、現在は起業しやすい環境も整ってきています。起業家に必要なものは何かと問うならば、もちろん勉強や先見性は大切ですが、突き詰めれば行動力だと思うんです。はじめの一歩を踏み出せない人は、いつまでたってもその先に進むことはできないのではないでしょうか。

他の経営者インタビュー

「正直に、嘘なく、裏表なく」を貫くしごと

株式会社ループス・コミュニケーションズ
斉藤徹