“「メールといっしょに香りも届ける」心も近づくコミュニケーション”

着パフ株式会社
代表取締役社長兼CEO
坪内弘毅

インタビュー: 2013/12/13

1980年10月3日生まれ。東京都世田谷区出身。早稲田大学法学部卒業。早稲田大学在学中にウェブサービスの会社を立ち上げ、5年後にクローズ。社会勉強のためにコンサルティング会社S社に入社し初めて就職を経験する。2012年12月、スマートフォンでメッセージと一緒に香りを届けるサービス・着パフ株式会社の取締役社長兼CEOに就任。新しいコミュニケーションツールとして文字通り世界中から注目を集めている。

生年月日:
1980年
出身:
東京都
出身校:
早稲田大学

- 会社経営は小さい頃からの夢だったのでしょうか?

いえ。高校生までウィスコンシン州にいて、大学進学のために帰国しました。親族男性が全員東京大学卒ばかりという環境で、早稲田に進学が決まった時の周囲のガッカリする姿を見て、「絶対に父親の年収は超えてやる」と決心したくらいですね。実際に超えるのは難しかったですが(笑)
実は特に起業への強い想いがあったりとか、起業してやろうと思っていたわけではないのですが、19才の時、個人情報保護法が施行され司法書士や弁護士事務所の膨大な書類のデータベース化をたまたま縁があって手伝うようになり、それがうまくニーズと時流にあたっていたみたいです。あるタイミングで法人化をするほうが都合が良くなってきたためにシステムやウェブサービスの会社を立ち上げました。このころはちょっとネットビジネスの始まりのような時期、この時期に活躍していた経営者ではライブドアのホリエモンさんというITバブルの第一世代。ただ、社会人経験がない状態で起業していたこともあり、5年で会社を成長させていくことの限界を感じ会社勤めを始めました。コンサルタントとして6年くらい仕事をした頃、この事業の設立者との出会い、もう一度やりたかったモノづくりの現場に戻ったという経緯です。どうせやるなら人がやっていない分野で競争力があり、世界への発信力があってIT化されていない領域だと思いました。実は「香り」の業界は長い歴史があり市場も大きいのですが、コンサバティブでITとは非常に遠いところにあります。そこにメスを入れたいという思いから始まっている事業です。

- 着パフのサービスについて教えてください。

スマートフォンでメッセージと一緒に香りを届けるサービスです。専用のアプリを使ってメールを送ると、相手のスマホのオーディオジャックに取り付けたデバイスから香りが出ます。デバイスさえあれば、目覚ましやFacebookの「いいね」のお知らせ、ゲームの効果臭として使うことができます。現在の香りは約100種類程度。果物の匂いやアロマが主流ですが、将来的には医療でも使える効能がある香りや香水メーカーとのタイアップも視野に入れています。販売予約を開始して3週間で1万個、半分はアメリカからの注文です。言語対応がもっと進めば、もっと増えると予測しています。

- 自分が楽しむのではなく、相手に香りを送るという視点が面白いですね。

この商品には、相手をもっと喜ばせたいという思いが根底にあります。通常のメールからもう一歩、相手に近く温かいコミュニケーションです。人間関係を煩わしく感じる人が多くなった今だからこそ、よりクローズなコミュニケーションがあってもいいなと。匂いが出る時に同時に煙もパフッと出るんですが、これもより立体感のあるコミュニケーションのための価値だと考えています。ある新商品がライフスタイルを変えるくらいの影響力を持つには、工夫と仕掛けが必要です。アーリーアダプターやイノベーターたちに「面白い」「自分も使ってみたい」と思ってもらうことで拡散作用を起こした上で、今流で言うとバイラルな広がりを引き起こしていく中で、一般のユーザーに段階的に浸透していけばよいなと考えています。その層が拡散しやすいような情報発信をすれば、自然にネットや口コミで広がっていき広告費は必要なくなります。

- このサービスが生れたきっかけを教えてください

2011年5月、30代の経営者・プログラマー・エンジニア・デザイナーが集まり、日本の未来に向けて勇気を持てる事業をやろうと会社を設立しました。メンバー女性の「携帯に香りを使ったサービスがあれば」の一言をきっかけに、特許を調査したところ類似特許は皆無で「これはチャンスだ!」と。社名も着うたの「着」、パフュームの「パフ」から名付けられたものです。モノを作ってから売るのではなく、まずユーザーを獲得してから生産に入るという手法をとりました。まず設計の段階でプロトタイプをマーケットに出し、4日間に300万円位売れたので製品化を決めました。試行錯誤を重ね、元々はiPhone4sのドック部分にはめ込むタイプでしたが5に替わったタイミングでそれまでのデバイスは全て破棄。オーディオジャックに差し込むようにしたので市場は広がりましたね。

- 会社のなかで大切にしていることは?

マーケティング、プロダクトデザイン、宣伝手法、全てにおいて「今流のビジネス」ということを非常に強く意識しています。例えば、今後のお問い合わせは全てオペレーターとのチャットなんかも今後は導入していこうと考えています。それによってのメールの煩雑さはなくなり、ユーザーの求める答えを1秒でも早く、即時に提供していくことでユーザーフレンドリーな企業にしていきたいと考えています。また、この着パフシステムの全てのプログラム(SDK)をマニュアルもつけてネットに公開し、オープンソース化しています。着パフの無料アプリをゲーム会社やSNSが自由につくれるようになることで、私たちが考えるよりもスピードも速く楽しいゲームが生まれ、市場が活性化するという考え方です。

- 今後の事業展開に関しては

アメリカ→ヨーロッパ→アジア諸国とユーザー獲得しながら1年かけて世界一周し、ハードを行き渡らせます。そして新しいアプリを次々と流入させてプラットフォームをつくり、世界中のユーザーが香りを楽しむマーケットを生むことが1年目。2年目は、資生堂やシャネル、ネスレなど私たちのユーザーを使ったビジネス展開を提案し、大手メーカーと一緒にコラボをしながら、仕事をしていきたいですね。3年目は、デバイスのなかに入っているチップで、いつどの場所で何の香りがどれくらい使われたかデータを回収できるようになっているので、全世界の使用履歴をデータベース化して次のビジネスに生かしていくような展開も考えています。スマートフォンデバイスの切り口から入っていき、プラットフォーム開発やビックデータビジネスなどにつなげていければ面白いかと。道のりは険しく、大変ですが(笑)

- 起業を目指す人へのメッセージをお願いします。

起業が流行っていますよね。昔よりも起業もしやすいですねし。ただ、特に最近思うのですが、簡単に起業できるからこそ、多少シビアに見ることも重要だと感じています。僕の個人的な意見ですが、戦略感やビジョンの角度が鋭くない人は弾かれてしまうので、勝ち目がなければ無闇に起業しない方がいいと思います。それでも、起業のダイナミズムを経験することも人生の中で重要だと思いますので、その上で起業を経験することも若いうちだからチャレンジできることかもしれません。ただ、起業するビジネスの内容としては、人に真似されるような市場では起業しないのが得策です。

- 座右の銘を教えてください

いつも思っているのは「ワクワクすることをしなさい、そうすれば生まれて来た目的に辿り着く」という言葉です。自分がワクワクしているということは、最低でも一人の人間を楽しませているということ。逆に自分さえ楽しませられないなら、人をワクワクさせられる証明さえできない訳ですから。

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