“地元温泉郷発、育てる漁業で地域の活性を目指す”

株式会社西日本冷食
代表
日野美貴

インタビュー: 2014/09/12

大学卒業後、長浜の魚市場に就職し、冷蔵商品の管理等に携わる。当時懇意にしていたボイルシャコの生産を手がける中国人女性から、日本での取引先紹介を頼まれたことがきっかけとなり、2009年に株式会社西日本冷食を創業。現在では全国の魚市場・問屋・外食産業ほか、約500社まで取引先を拡大。また、社内で扱う甲殻類の殻と地元の地下熱を利用した温水を活用した国産うなぎの養殖にも心血を注ぎ、その功績が多方面から注目されている。

出身:
福岡県

- 水産の道に進んだきっかけを教えてください。

知人から魚市場を紹介されたことがきっかけです。それまではまさか自分が水産業に行くとは思いもせず、ましてや起業するなんてことも全く考えていませんでした。

- 市場の世界はいかがでしたか?

冷蔵倉庫での商品管理が主な仕事でしたので、男性たちのような肉体労働はさほどなかったものの、朝は早いし、市場は24時間動いていたので、やはりハードではありましたね。しかし働き続けていたら次第にこの業界のさっぱりした人間関係が好きになり、自分の気質にも合っていると気づき始めたのです。とても居心地のいい職場でした。

- 市場勤務から起業に至るまでの経緯を教えてください。

市場で働く中で多くの方とご縁を持たせていただきましたが、その中でも、紹介である一人の中国人女性と特に親しくなりました。彼女は中国の水産加工会社で、主にボイルシャコの生産に長年携わってきた方で、豊富な水産技術と知識を持っていらっしゃいました。その方に、日本での取引先を一緒に探して欲しいと頼まれたのが起業のきっかけです。

- 起業後、ご苦労されたことも多かったのでは?

大変だったのは資金調達ですね。でも、仲間と一緒に起業したという意識と経営パートナーである中国人女性の人柄や彼女の持つ商品の質の高さに自信があったので、とにかく色々な所に資金繰りの協力をお願いしたり、助成金を申請したりして、奮闘しました。

- 逆に、喜びを感じる瞬間はありますか?

正直、まだ実感できる喜びというのはないですね。私自身も当社もまだまだ成長途中ですので。特に人材面においては、未だ葛藤の中にいます。「人、モノ、金」という先人の言葉がありますが本当にその通りで、私もこの3つには常に悩んできました。中でも、会社にとって「人」は一番大切。ですから、中小企業であっても長く働き続けてもらおうと思ったら、人をじっくりと教育していく必要があるんです。けれどそう強く感じる一方では、会社の目指すステージ、成長スピードに応じて、ある程度は割り切って人を入れ替えていくしかないのかな、と思うところもあります。

- 今後の事業展開について教えてください。

私たちは輸入商品の卸売りからスタートしましたが、今後は自分たちで国産商品を作ることにも、挑戦していきたいです。現在すでに、故郷に養殖施設を作ってうなぎの養殖を始めているのですが、そこでスッポンも養殖できることが最近わかったのです。そういう試みを続けていく中で、世の中は「捕る漁業」から「育てる漁業」に変わっているのかな、と感じますね。うなぎに関しては、稚魚の高騰や絶滅危惧種に指定されるなど色々と逆風はありますが、それでもこの市場は現在も1000億円という大市場。たとえ今後、縮小されるとしてもまだまだ見込みはありますし、和食という文化をより積極的に海外へ輸出していくのであれば、うなぎは欠かせない食材です。ですからこれからも、安全でおいしい国産うなぎの生産には特に力を注ぎ続けようと思います。

- うなぎの養殖施設を故郷に作った理由とは?

通常、養殖施設の温水は重油等で維持するのですが、故郷には原鶴温泉があり、この地下熱を利用した温水が養殖に使えると考えたからです。餌も、主に甲殻類を食べて育つ天然うなぎの生態により近づけるため、自社工場から大量に出るシャコのむき損じた身や殻を使っています。とても安全でエコな養殖ですね。陸上養殖への関心も年々高まっていますから、ここで地産地消をしながら自社ブランドを作ることで、故郷の活性にも貢献できたらと考えています。「地域活性」という目標を実現するために、まずは故郷でブランドを確立させて、全国へ発信していきたいです。

- 起業を考える方へ、メッセージをお願いします。

起業するなら早い方がいい、成功するなら遅い方がいい。私はそう考えています。起業の苦労を味わった分だけ、その後の踏ん張りが利くし、成功した時の喜びや楽しみが実感できるのではないのでしょうか。私自身は日々、自分のやるべきことをしっかりこなしながら、真摯に人と向き合っていく。ただ、これだけです。

- 御社で求める人材像をお聞かせください。

やっぱり、やる気と素直さですね。最近は、会社が自分に合わないとすぐに結論づけて転職してしまう人が多いですが、辞める前にその会社を好きになる努力をしたかどうかを考えて欲しい。入った会社を好きになれれば、仕事内容にも愛着が出るし、そこで働くことが自分自身の成長へと繋がると思うんです。勿論、努力した結果合わないのは仕方がないけれど、せっかくご縁があったのだから、まず好きになる努力をして、その中で新しい目標を見つけたら動くという方が好ましいのではないでしょうか。そういう意味でも、人の言葉をまずは素直に受け取る謙虚さが、会社の中で成長していくためには大切だと思います。

- 好きな言葉はございますか?

その時々で変わりますが、今は「素直であること」でしょうか。相手に対しても、自分に対しても、お金に対しても(笑)。私はまだ具体的な仕事の達成感や喜びを得ていないものの、この仕事を通して得た人の縁や信頼など、決してお金では買えないものの有り難みは深く実感しています。そういった日々のご縁にも、素直に感謝し続けていきたいですね。

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