“地盤のセカンドオピニオンで業界のスタンダードを作る”

地盤ネット株式会社
代表取締役
山本強

インタビュー: 2014/09/12

関西学院大学法学部を卒業後、証券会社を経て住宅メーカーに転職。その後、地盤調査会社に約10年間勤務し、2008年に地盤ネット株式会社を設立。2012年、東証マザーズ上場。地盤業界が抱える情報格差と生活者の不利益の解消を目指し、地盤調査データを公正中立に再解析する「地盤セカンドオピニオン®」を実施。

生年月日:
1966年
出身:
大阪府
出身校:
関西学院大学

- いつ頃から起業を考えるようになられたのですか?

両親がそれぞれ経営者だったので、小さい頃から起業への憧れは持っていました。しかし、大学を卒業してもなかなか思い切ることができず、40歳になるまで典型的なサラリーマン生活を送っていました。きっかけになったのは子どもの誕生。父親として、胸を張って「やりたいことをやっている」と言える人間でありたいと思ったのです。立ち上げから3年ほどは、なんとか軌道に乗せようと必死でした。子どもが成長して分別がつくようになった時に、恰好悪い父親の姿は見せられないですからね。

- 地盤事業に着目したきっかけを教えてください

私は地盤会社に10年ほど勤めていたのですが、その中で、地盤業界全体の不透明さを痛切に感じていました。戸建住宅を建設するうえで、いまや地盤調査は必要不可欠なものになっています。しかし、調査やそれに伴う改良工事には曖昧な部分が非常に多く、本来必要のない工事費が発生してしまう事例が多々見受けられたのです。たとえば、地盤調査には明確な調査基準がありません。そのため各社がそれぞれの方法で調査や分析を行い、さらにいえば、その後の改良工事で利益を出そうと自分たちに都合のよい調査結果を導き出すような傾向があるのです。本来はもっと簡単な工事で済んだり、そもそも改良工事が必要ない地盤であっても、地面の下のことですから一般の方々には分かりません。結果、施主側が知らず知らずのうちに不利益を被っているようなケースを目の当たりにしてきました。このような情報格差をなくすために、地盤の「セカンドオピニオン」の形でサービスを提供していこうと考えたのです。

- 御社では改良工事を行っていないのですか?

工事は行いません。そもそも地盤業界の不透明さを増長させている一因は、調査と工事を同じ会社で行うからです。業者側からすれば、工事もあわせて請け負った方が利益になりますからね。私たちは公正中立な立場を守るためにも工事は行わない、というのを一つのポリシーにしています。改良工事が必要といわれていた土地であっても、当社で解析した結果、これまで約7割で工事不要の判定が出ています。

- 設立から6年、着実にシェアを拡大されていますね

現在当社は、住宅地盤業界において第3位に位置しています。このたび、業界第2位の企業と資本業務提携を行うことが決まりました。これによって、私たちはシェア25%を超える業界トップクラスの企業グループとなります。シェア拡大による一番のメリットは、業界内での影響力が強くなることです。先ほども話しましたが、現在、地盤調査には明確なルールが定まっていません。私たちが発言力を高めることによって、不平等感のない、本当のスタンダードを作り上げたいという思いがあります。

- 今後の展望をお聞かせください

住宅を建てる時に、一番はじめの工程になるのが地盤調査です。住宅建設という大きな買い物の最初の段階で接点を持つことができれば、建物すべてに関わることができるでしょう。さらに当社では工事不要と判定した場合に20年間の補償をつける地盤品質証明書を発行しており、施主様とは長いお付き合いをさせていただきます。その中で、さまざまな商品開発やサービス提案の可能性が生まれてくると考えています。現在の目標は業界内でのシェア40%。それだけのシェアをもつことができれば、地盤調査だけでなく、その後の建設も集中的に行うことができます。建設材料や工事の手配も効率的になり、住宅価格が大幅に軽減できるのではないかと予測しています。

- 海外展開についてはどのようにお考えですか?

海外にも日本同様地震が頻発する国や地域がたくさんあります。たとえ大きな地震に襲われても、住宅を建てる前に調査と対策を徹底していれば、倒壊を避けられる可能性が非常に高くなる。プレートの位置によっては、地震が起きやすい地域の予測を立てることができます。今後はそれらの国に、日本の住宅地盤技術を伝えていきたいですね。

- 社内で大切にしている文化はございますか?

私たちは「“生活者の不利益解消”という正義を貫き、安心で豊かな暮らしの創造をめざします」という経営理念を掲げています。これはまさに当社設立の動機でもあるもので、決して譲れない根本ですね。さらに、全員が共有すべき考え方として「地盤ネット10箇条」というものを定めています。その中でもっとも重視しているのが「目標に向かって全社一丸となり、スピード感を持って行動する」ということ。どんなに大勢の人間がいても、みんながバラバラの方向を向いていては、組織としての力は弱くなってしまいます。また、たとえ団結していても動きが緩やかでは、時代の流れについていくことはできません。当社では、1年ごとの期ではなく3ヶ月ごとにキックオフを開催し、事業計画の見直しや目標の設定などを行っています。一般的な企業の1年間を四半期で進めていくスピード感と密度の濃さが当社の特徴です。

- 日頃大切にしている言葉を教えてください

創業から2~3年経った頃に出会った、「禍福は糾える縄の如し」という言葉。良いことと悪いことはより合わせた縄のように繰り返されるものだ、という意味です。悪いことはいつまでも続かないし、逆に良いことも続かない。表裏一体で繰り返す、単なる法則なんだと。この言葉を知ってから、一つひとつの物事に一喜一憂しないようになりました。状況が悪くても落ち込まず、良い時は逆に気持ちを引き締めるように意識しています。

- 失敗談はございますか?

当社は一昨年、上場を果たしました。もちろんメリットも大きかったのですが、予想外だったのが人材採用についてです。上場した途端、求人に対してそれまでの10倍以上の応募が集まるようになりました。そこで多くの人材を採用したのですが、いざ彼らが入社してみると、大きなギャップを感じるようになったのです。それまで当社に入社を希望するのは、チャレンジ精神旺盛な、ベンチャーマインドに溢れた人たちでした。それが上場以降はそうではなく、極端にいえば「上場企業で働きたい」という安定感を求める人が多くなってしまったのです。そのような人は入社しても当社のスピード感に違和感を覚えるのかすぐに退職してしまい、組織的にもやや混乱した時期がありました。その反省を踏まえて教育制度を見直し、新卒採用も開始。採用のあり方を再確認する機会になりました。

- 起業を志す方へのメッセージをお願いします

私が起業したのは40歳の時でしたが、振り返ってみると非常に良いタイミングだったと思います。それまでずっとサラリーマンだったので雇用される側の気持ちも理解できますし、今につながる経験や勉強を積むこともできました。一般的には起業するなら若い方がいいといわれていますが、さまざまなスキルを持ち、気力や体力もある40代にこそ起業して欲しいと思っています。しかしそうはいっても40代は、会社内で中枢に位置する人も多く、家族の問題などでなかなか思い切れないことも多いでしょう。そのような人たちを支援するために「40's Angel」というものを設立したいと考えています。ノウハウや資金面等での支援によって、起業を志す同世代の方をサポートしていきたいですね。

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