“優秀な「個」の力を結集し、世界のトップERPベンダーへ”

株式会社ワークスアプリケーションズ
代表取締役最高経営責任者
牧野正幸

インタビュー: 2014/09/30

建設会社を経て、ITコンサルタントとして数々のプロジェクトに携わる中、日本の大手企業に適応したERPパッケージソフトウェアの必要性を痛感する。1996年、株式会社ワークスアプリケーションズを設立。同社の製品である、日本初の大手企業向けERPパッケージソフト「COMPANY」は、ERPパッケージ市場シェアNo.1として不動の地位を築く。同社のイノベーションの源泉となる“優秀な人材”の採用に注力し、画期的な採用プログラムを展開。第一線で活躍する社員と一緒に、数週間かけて現実のビジネスで直面する課題に取り組む「問題解決能力発掘インターンシップ」は、学生から高い人気を博している。また、「働きがいのある会社ランキング」(Great Place to Work Institute)では6年連続ベスト4入りを果たす。

- 小さい頃から独立したいという夢があったのですか?

独立志向はまったくありませんでしたし、社会人になってからも「起業したい」などと思ったことはありませんでした。当時は自分の能力を伸ばすためだけに、他の人がやりたがらない難しく辛い仕事、トラブルを抱えている案件などを率先してどんどん引き受けていました。それこそ、寝る暇もないほど。でも1日1日がとても充実していて、楽しかったです。

- 辛い仕事というのは一般の人は嫌がるものなのでは?

仕事というものは、いくつかの種類に分けることができると思います。まずは、楽しくて良い結果を期待できる仕事。これは誰でもやりたがりますよね。次に、誰にでもできる簡単な仕事。これも、ラクしながら仕事量をこなせるので意外と人気があります。後は、私がやっていたような難しい上に誰がやってもうまくいかないと思われる仕事。こういう厄介で辛さしかない仕事は皆が嫌います。でも私は、そういう仕事を自ら喜んで受けていました。なぜなら、難しい問題を必死に考えていく過程でこそ、自分の実力は確実にあがりますし、たとえ成功しなくても、そもそも「うまくいくわけない」と思われていた仕事なんですから、そこまで気に病む必要もないわけです。

- そんな中、起業するきっかけになったこととは?

それまでの仕事は面白く、不満なく働いていました。ただ、2つ思うことがあったのです。1つは、自分が本当に優秀だと思える人達ばかりがいる環境で働きたいということ。あるプロジェクトのためにシリコンバレーに滞在していた時、社員数十人といういかにも潰れそうなベンチャー企業と仕事をすることになったのですが、そこにいた彼らが皆、恐ろしく優秀な人達で、一つ課題を与えるとすぐに適切な答えを返してくるのです。それも自分が予想もしなかったようなことを提案してくる。とても驚愕しました。彼らとの仕事はとても楽しく、またどんなに困難な状況下であっても自信を持って取り組む姿勢が頼もしくもあり、非常に刺激を受けました。それと同時に「なぜ、こんなに優秀な人達が、大企業でもなく、また決して高給でもない会社で働いているのだろう?」と疑問に思いました。その答えは、「成長」でした。20代のうちはとにかく成長が全て。将来自分が成功するためには今、力をつけるしかない。そのためにベストな環境を選んだだけだと彼らは言うのです。大企業は知名度やブランドがあるものの、仕事や組織が仕組み化されているため、若いうちに力をつけることができない。ですが、あらゆることをやらなければいけない環境下で、自身で判断をしながら成功と失敗を繰り返すことのできるベンチャー企業なら、大手企業で10年20年かかることを僅か4~5年で経験できるのです。当然、成長スピードには格段の差が生まれるでしょう。一方、日本でそのような環境を有する企業があるだろうかと考えた時、私の答えは「NO」でした。本当に優秀な人材だけが集まり、互いに刺激しあい、圧倒的に成長できる環境を作りたい。そんな思いがあったのです。もう1つは、当時私が日本のIT業界に抱いていた大きな問題への危機感。実は我々が登場するまで、世界に通用するソフトウェアを開発できる会社は日本に存在していませんでした。特に、当社が持つ製品の領域、ERP(統合基幹業務)パッケージソフトウェアにおいて、日本独特の業務に対応したソフトウェアがなく、日本の大手企業は、海外製のパッケージソフトに手を加えるか、オーダーメイドでゼロからシステムを開発し、莫大なコストを投下していました。日本は海外に比べ、IT分野においては10年も遅れをとっているといわれていたのです。高度成長も終わり、低迷する日本経済において企業の国際競争力を高めるには、ITコストの無駄をなくすことが宿命であり、それには日本の大手企業にフィットするパッケージソフトウェアが必要不可欠でした。日本企業のために誰かが立ち上がらないといけない。誰もやらないのなら、自分でやるしかない。ならば、優秀な人材が飛躍的に成長できる会社を作り、日本の大手企業向けのパッケージソフトを開発しようと決意したのがきっかけです。

- 誰もやらなかったというのは、理由があったのですか?

当時、日本でこの種のパッケージソフトの製品化は、とてつもなく難度が高く、また巨大なソフトウェアを開発する必要があったため、実現不可能だといわれていました。当初は、私も起業するつもりはなかったので、大手IT企業に開発を依頼しましたが「そんなもの我々には作れない」と全社に断られました。「作れるはずがない、作れても売れない、うまくいくわけない」と散々いわれましたよ。私は、優秀な人材さえ揃えば可能だと考えていたのですが、それすら「集まるはずがない」と。とても悔しかったですね。しかし、どんなに障壁が高くても今後の日本のためにやらなければいけない。絶対にできると信じ、立ちはだかる問題を一つひとつ解決しながら、地道に歩みを進めてきました。結果、現在では市場シェアNo.1として、日本を代表する1,000以上の企業グループに当社のERPパッケージソフト「COMPANY」をご利用いただいています。

- 「人が成長する環境」とは、どのようなものだとお考えですか?

若いうちに飛躍的な成長を遂げたいなら、しっかりとビジョンが確立されたベンチャー企業に身を置くべきだと思います。ベンチャー企業の定義とは、まず、組織の力よりも個の力を重視していること。もう1つは、イノベーションを起こし続けているということ。当社は規模だけ見れば大手企業と捉えられるでしょうが、そういった意味では、私は今でもベンチャー企業だと思っています。成長は、日々起こる問題の解決方法を考える過程にあります。組織力が強いと役割分担が明確に線引きされ、仕事が固定化してしまうため、決められた仕事を教えられた通りの方法でこなすだけになってしまいますが、それでは成長できない。個人が能力を最大限発揮するには、他人に責任を求めない・求められないという状況下で、難しい仕事にチャレンジし、問題に対して自分の力で考えて解決しようとすること。そして失敗を経験すること。それが、圧倒的な成長につながると考えています。また、ある程度完成された製品であれば、あとは顧客の要望を汲み取り、改善・改良を繰り返すだけでよいでしょう。しかし当社が手掛けるERPパッケージソフトはそうではありません。顧客や業界の常識を超えるイノベーションを起こし続ける必要があるのです。企業のIT投資効率を世界トップへと引き上げ、そして次世代を担う優秀な人材が成長を続けるためのフィールドを提供し、社会に貢献すること。これは当社の存在意義ともいえるものです。だからこそ当社は、研究開発費と人材開発費に圧倒的な投資を行っています。

- その思いが、インターンシップによる採用活動につながるのですね

繰り返しになりますが、若いうちは成長が全て。今のうちにずば抜けて成長し、組織の一員としてではなく、自らの手で“自分にしかできない”何かを築きあげた人こそが、これからの時代においては大手企業の経営トップに抜擢されたり、あるいは起業家となって成功することができるのではないでしょうか。そして、成長するには自らが問題の解決について考え抜く、問題解決能力が必要です。その重要性に気づいて欲しいということもあり、当社は採用をインターンシップ経由で行っています。その名も「問題解決能力発掘インターンシップ」。業務と同等の難しい課題を与えることで、ゼロから考える場を提供しています。やり方さえも教えません。そのような課題解決のプロセスの中で、人は成長していくのです。今では日本最大級の規模で、毎年何万名もの学生が応募するものになりましたが、実はこのインターンシップも、製品開発同様に周りからは「絶対に無理だ」といわれていました。そんなにコストをかけるくらいなら一般の求人で募集した方が効率的だ、また成績優秀者に発行する“入社パス”には拘束力がないから学生は入社しないだろうと。でも結果的には、成長を求める優秀な学生が毎年何百名と入社してくれています。30分程度の面接を複数回繰り返すだけでは、企業にとっても学生の能力を見極めることはできませんし、また学生にとっても企業の本質を知ることはできません。このインターンシップで濃密な時間を過ごすことで、問題解決能力を引き出し、学生は成長を実感することができるのです。私たちの成長の原動力は人材がすべて。そのためなら、いくらコストや手間をかけてもかけすぎということはないと思っています。

- 今後の事業展開についてお聞かせください

当社は日本初のERPパッケージソフトベンダーとして、世界トップクラスの企業となるべく積極的な海外展開を行っています。というのも、国際社会となった現代においては企業のグローバル化は必須です。その中で、私たちの顧客である日本を代表する大手企業をサポートするためにも、我々自身がグローバル企業とならなければいけません。現在、上海とシンガポール、ニューヨークに拠点を構えていますが、今後も顧客企業から要望のあるエリアには、全世界どこであっても全てに進出するつもりでいます。同時に開発面にも力を注ぎ、今秋に新たな製品を発表する予定です。世界初となる画期的な製品で、これまでのERPをいわゆる“ガラケー”とすれば、これはいわば“スマートフォン”。機能やスピードなど、あらゆる面で過去の全てを凌駕するものになるでしょう。日本初のソフトウェアで世界のテクノロジーリーダーを目指す。それが、次世代のトップリーダーやトップエンジニアたちに対する我々の務めなのです。

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