“「権利と責任」がクリエイターの理想郷をつくる”

株式会社シグナルトーク
代表取締役
栢孝文

インタビュー: 2014/02/27

1975年2月10日生まれ。1997年、大阪市立大学工学部情報工学科卒業。1999年、大阪市立大学大学院工学研究科情報工学専攻卒業。(株)インテックにてプログラマーを経験後、合資会社を設立。1999年、(株)セガ・エンタープライゼス入社。2000年、(株)ソニックチーム入社。2001年、(株)ソニーコンピュータエンタテインメント入社。2002年、シグナルトーク・コーポレーション代表取締役就任。

生年月日:
1975年
出身:
大阪府
出身校:
大阪市立大学大学院

- 起業のきっかけをお聞かせください

もともとゲーム制作をやりたくて、プログラムをずっと勉強してました。で、徹夜で麻雀した朝、麻雀って面白いよねっていう話から、有料でちゃんと品質高くやれば勝負できるんじゃないかって。大企業にいた時は、自分でイケてる企画だと思っても、まずは上司を説得して、課長と係長と部長と専務と…その後社長を説得して。ゲートが多い程アイディアは平均化されますし、理解できない人がいたりして。たぶん斬新な企画は、大企業の中でも出てるんです。でも実現されない。当時の企画書とか見ると、数年前に考えてたアレ、今すごいヒットしてるね、ロゴは違うけど。みたいなのも結構ありますよ。ジレンマですね。やっぱり起業した方がいいんじゃないかなっていう感じなんです。

- 社内で大切にされている文化や考え方はありますか?

クリエイターの理想郷をつくろう!というのがあります。クリエイターが会社に求めることを叶えよう!と。例えば休み。会社の売り上げが前年比10%プラスになった月は、次の月に1日、20%増の月は2日休みが増えます。また、月曜日はStart-Up Laboといって新規事業を何やってもいい。というか、やる。新しいものを作るという文化も大事にしたくて。小さいものだと、野菜ジュースの支給。風邪引く人が多いから、野菜でビタミン補給しようと、気休め程度ですが完備して、そこそこコストはかかるけど、ちゃんとやっていこうとか。それもスタッフからの提案で、制度を変えていくってところはかなり大事にしてます。もう1つは、うちは情報がオープンで、ファイルも大体見られるようになっていたり、メールも全社員が見られて、例えば僕が修正してくださいって送ったとしても、栢さんそれ間違ってますよっていう指摘も入ったりするんですね。慣れてきたスタッフは、どう見ても社長宛のメールじゃない文面(笑)。それでも大事にしている文化です。ただ一方で、お互いにミスとかも見えちゃうんで緊張感もすごい。自由と責任というか、「権利と責任」が常に隣り合わせで同居してるっていうのを、いろんな場面で明確にしていきたいです。

- クリエイターの理想郷として、労働時間はどのようにお考えですか?

リアルタイムでお客様に迷惑をかけてるような状況では致し方ないですが、それ以外は、徹夜なし。土日も両方出るのはダメ。1日8時間で収めるのはもちろん、「有給取得奨励日」というのを設けて、夏休みの前後とかに入れて休んでくださいとしています。これは回覧に丸つければ休めるので、かなり気楽に有給が取れる。みんなが休んでるから自分も休める、逆に言うと出てきてもしょうがない。できるだけ労働時間を短くして、それによって長く勤められる会社にしたいです。また、業務効率テストというのをやってます。能力テストではなく、PC操作に時間のかかる人達にスキルアップしてもらう。これは有給とも関連していて、短い労働時間の中で、しかし高いアウトプットをしていくっていうことを考えるきっかけにしてほしいんです。また、弊社に転職してきた人が面喰らうのが、スケジュール延期の奨励。スケジュールには細かいタスクがありますが、1日2~3個は必ず延期のメールがある。ちょうど一昨日、ある大きなゲームの締切が、もうどう考えても間に合わないのに延期されてなかったので、「ちゃんと延期してください」って言いまして。何故かというと、品質も納期も守ろうとすると、長時間労働になりかねません。逆に労働時間を守れば、今度は品質が下がる。延期してでもやっぱり長時間労働を避け、品質を守りたいんです。

- 長く勤められる会社にしたいとのことですが、実際の離職率は?

相互評価という形で、利益の半分をスタッフに分配するというのをやってるんですが、その査定も、360度評価で、誰がいくらもらうべきかっていうのを%で全員が投票するんです。すると各人が全員から評価されるという状態になり、その平均値で給与が決まる。私も1票しかないので、私の方だけ見て仕事しててもダメなんです。たからすごく頑張った人は極端に点数が高くなります。点数が低い人は2通りで、周りに聞いて、「そこが悪いのか、じゃあ頑張ろう」って伸びていく人と、辞めてしまう人。そういう意味での淘汰はあるので、やっぱり厳しさはあると思います。でも、普段からちゃんと周りのスタッフと協調関係を持っていい仕事をしていれば自然と高くなりますから。仕事する時は楽しく厳しくということで。

- 今後の展開についてお聞かせください。

1つは社員主導の事業をいくつかやっていきたい。もう1つはゲームと脳の関係というところで、「脳測」という脳の認知機能を測るウェブサービスをつくったんですが、これをもっと科学的に分析して調べていきたいです。健康とITをテーマにした事業を今後やっていきたいと思っています。

- 起業を志す人へのメッセージをお願いします。

「超」優秀な人はすぐ起業してください。そこそこ優秀な人は中小企業やベンチャーで自分のスキルを高めてから起業。優秀じゃない人は死に物狂いで大企業に入って、ずっとそこにいてください。それが1番たぶん幸せです。この「超」優秀な人っていうのは、「あなたは3段階のどこですか?」と聞いた時に、「1番上です」ってためらいなく答える人。自分はどっちだろうって思う人はたぶん良くて優秀ぐらいだと思います。今、経営者として成功されてる人って、学生の時からそういうことを自分でもう完全に思ってる人じゃないですか。迷いがない。だから、どうしようかなって迷うぐらいの人は、大企業に行った方がいいと思います。

- 印象深い失敗談はありますか?

2009年にサイバー攻撃を喰らい、サービスが止まってしまいました。我々のゲームは毎日お客様が麻雀を遊んでくれることで売上が立つものなので、サーバが止まってしまうとそこから売上がゼロ。メールで脅迫文も来まして、攻撃やめて欲しければ現金よこせと。当然、警察と相談したりいろいろやったんですけど。社員を集めて、これが2ヶ月以上続けばうちの会社つぶれるって話をして、女性社員は泣いてて。これはお客様に対してきちっと説明しなきゃいけないということで、サイトに私の名前と言葉で、1日に2回ぐらい、状況説明と、もう命かけて頑張りますって書いて。でもそのページもしばらくしたら攻撃受けて見えなくなっての繰り返し。でも、1日100通ぐらいメールが来て、それがもう全部、励ましのメッセージだったんです。それを見て泣きながら仕事してるスタッフもいて。結局2週間後に復活宣言を出せるようになりまして、そこに、いただいたお客様からのすごい数のメッセージと私のお礼のメッセージをバーッて並べたら、ものすごいアクセスが来まして、逆にそのアクセスでまた1回落ちたりしたんですけど(笑)、でもその後、お客様の数がもう過去ないぐらい増えまして。ピンチはチャンスだなと思いました。

- 座右の銘があれば、教えてください。

「とにかく挨拶は必ずしろ」挨拶は、敵意がないことを示す最後の手段。例え昨日ぶつかっても、こんな時代だからこそ、とりあえず人として敵意は持ってないんだなって相手に示せる最終手段なんですね。

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