“次世代のマーケティングに向かって加速する”

シナジーマーケティング株式会社
代表取締役社長兼CEO
谷井等

インタビュー: 2014/04/25

神戸大学経営学部卒業後、1996年日本電信電話株式会社入社。1997年、合資会社DNS(デジタルネットワークサービス)を設立し、代表社員を務める。 2000年、株式会社インフォキャストを設立、代表取締役に就任。 同年インデックスデジタル株式会社を設立。 2005年にシナジーマーケティング株式会社を設立し代表取締役に就任。クラウド型CRMサービス「Synergy!」の提供で国内シェアNo.1に。2007年、ヘラクレス(現JASDAQ)上場。国際的な起業家表彰制度「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2007」日本大会のセミファイナリスト。

生年月日:
1972年
出身:
大阪府
出身校:
神戸大学

- どのような学生時代を過ごされましたか?

両親が洋服店を営んでいました。自分は内向的なタイプで人見知りをする傾向があり、洋服店を継いだら店が潰れると思われるぐらいです。小学校の同級生は大半が商売人の子どもで、自分も継ぐものだと思っていました。父親からは、家を継げという意味だと思うのですが将来は経営をするように言われ、高校時代に起業を目標として掲げ、大学は経営学部を選びました。にもかかわらず、そんなことは全部忘れて体育会のゴルフ部とアルバイトと遊びに大学時代は明け暮れました(笑)そんなとき、阪神淡路大震災で大切な友人を失いました。これが転機になったと思います。「人生いつ終わるかわからない、やりたいことはすぐにやろう」と考えるようになり、やりたかったことを思い出し、学生時代に教科書の転売という商売を始めたのです。書籍管理にPCを使い、各大学のスタッフとはメールでやりとりをする中でインターネットに出会い、衝撃を受けました。1ヵ月後には教科書リスト、休講掲示板、サークル宣伝のためのフリースペースなど、学生向けコンテンツのポータルサイトを立ち上げたほど。当時はそんな学生は珍しかったので、いろいろな企業から声をかけていただきました。その中である社長さんから「このビジネスを一生するつもりがないなら止めた方が良い」と言われたのです。これを素直に受け止め、就職活動をしてNTTに入社しました。法人営業部門に配属となり、大手企業を担当していました。

- 起業したきっかけは何だったのでしょうか?

いろいろな理由で入社半年後に辞職願を出し、実家に帰って2ヵ月間くらいぼーっとしていました。その後、父親に言われて実家で洋服を売るようになりました。仕事を与えられると人間、前向きになって結果を出そうと思いますね。一生懸命売上を伸ばそうとしました。売上に大きく貢献したのは、既存のお客様にメールを送ることでした。たとえば、「何日後にスーツが仕上がりますのでお越しください」と送信して返事が来たら、さらに「そのスーツによく似合うシャツを入荷しました」と送る。これでお取り置きになるし、来店いただいたときに話がはずみます。2割くらい売上が伸び、こんな良い方法はないなと思ったのが原体験です。ある日、メーカーの方から「良かったですね、こんないい洋服店を継がせてもらえて」と言われたことがありました。親の七光りと言われているように感じ、このままでは嫌だなと思いました。そこで、NTTの同期たちと無料でメーリングリストを使っていただく事業をメディア化し、広告収益を上げる会社を設立したのです。3年ほどで株式会社化し、ユーザー数が100万人に届こうというときにその事業を楽天さんに売却しました。

- 社内の皆様で共有している文化はありますか?

「センス オブ バリューズ(A Sense of Values)」と言っている理念体系があり、企業理念から経営原則、7つの行動基準や倫理規定など、ベースとなる価値観の共有を大事にしています。中でもサービスポリシーについては「101点のサービス」という言葉で全員の名刺に入れてあります。お客様の期待以上のサービスを、私たちの思いやり、気配り、心遣いのセンサーをピンと立てて提供しましょうということです。ただ、全員が同じ判断基準になってはいけないとも言っています。共通の価値観の上に多様性がないといけないと思うからです。さまざまな人間が集まって業務上のいろいろな意見をぶつけ合うことで多様な考え方や見識を身につけることができ、その中から新しい発想を創出していくことに価値があります。企業戦略とは違い、こうした企業理念や価値観の話は忘れがちですので、今でも研修を通して社内のメンバーに直接伝えるようにしています。

- 事業面での今後の展開をお聞かせください

マーケティングや消費者行動の予測技術の研究を行っていて、少しずつサービスに取り入れています。企業のデータと独自のアルゴリズムを用いたピンポイントで誰が商品に興味を持ってくれそうか、という予測で、大手旅行代理店様では反応率を15倍に、インターネットプロバイダー様では購買に向けての反応率を20倍に上げています。今後は、どのくらい予算を投入すればどのくらい売上が上がるか、といったマクロ的な予測もできるようになると考えています。また、声がどのような印象を与えるのかという研究や、脳波に関する研究にも取り組んでいます。たとえばTVCMを見ているとき、どこで集中しているか、どの情報をポジティブもしくはネガティブに捉えているか、脳波を取ることでより深く知ろうというものです。ただ、そのまま広告のオートビッドやリコメンデーションに使うというよりかは、いったん人間がモラルに基づいて判断した方が良いと考えており、マーケターの方に判断根拠となるデータを提供する形態をとっています。マーケティングというのは、まだまだ不透明な部分が多いと思っています。製造業で考えると、かつてのマニュファクチュアの時代は、一つ一つ手作りだったため商品の生産コストは高いし、品質の差も結構あったと思います。100年前、職人さんに鉛筆1本10円で、1万本を均一な品質で来週までに作るように発注したら、きっと無理だと言われたでしょう。それが技術の進歩により、低コストで均一な品質の商品が大量に生産できるようになりました。マーケティングの世界もその感覚に近いと思っています。今はマーケターの勘やセンスに依存していますが、おそらくデジタル技術で消費行動は解明されますし、誰もが簡単に高いクオリティで最適なマーケティングコミュニケーションを実現できる時代が来るでしょう。弊社はその近いポジションにいます。独自の技術力をSF映画のような悪い用途でなく、良い使い方がされる未来にしたいですね。

- 起業を志している方へのメッセージをお願いします

「なぜ、今やらないのだろう」と思います。条件が整ったら、と考える人もいると思いますが、すべての要素がそろうことは絶対にないでしょう。それを待っていたらいくら時間があっても足りません。またリスクなんてないと私は思います。「起業して頑張っても、倒産したら借金を背負って破産するリスクがあるのでは?」と聞かれることもあります。でも、起業してすぐは信用がなく、意外と借金もできなかったりするんですよ。キャリアのリスクについても今は寧ろ、一度そうしたことを経験した人の方が社会的付加価値が高いと見なされると思います。起業は最低限の知識と時間、そして一番重要な情熱を投入すればできます。

- 座右の銘をお聞かせください

「他人のおかげ、自分のせい」です。良いことがあったら、周りのいろいろな人にお世話になったおかげだと思って感謝し、うまくいかないときには自分のせいだと考えるようにしています。たとえば、仕事で失敗してしまった時に「上司が承認してくれなかった」、「お客様が理解してくれなかった」などといろいろ理由は挙げられるでしょうが、「自分のコミュニケーションの取り方が良くなかった」と思えば課題として捉えることができ、成長の機会が見つけられます。これが大切だと思うのです。

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