“和の空間にふさわしいクラフトビールを生んだ創業者”

日本クラフトビール株式会社
代表取締役
山田司朗

インタビュー: 2013/12/13

1975年9月10日生まれ。愛知県名古屋市出身。明治大学政治経済学部卒業。ケンブリッジ大学Judge Business School MBA修了。卒業後、大手VCにてベンチャーキャピタリストとしてキャリアをスタート。サイバーエイジェント、オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)などで経営陣の一員として、上場準備・経営企画・財務・M&Aなどの業務に携わる。2008年より本職の傍ら、ビール事業の準備をスタートし、ビアスタイルの研究、ビール業界での人脈形成、試作品の作成などを経て、2011年Zynga Japan(ジンガジャパン)のジェネラルマネージャーを退任し、同年 9月に日本クラフトビール(株)を設立、代表取締役に就任。

生年月日:
1975年
出身:
愛知県
出身校:
明治大学

- 学生時代のお話を聞かせてください

高校までは岐阜県で過ごし、大学進学を機に上京。父の教育方針もあり、大学3~4年の時は新聞奨学生制度を使って、新聞配達をしながら通学しました。いつ訪問しても不在でなかなか集金ができなかったりと大変な思いもしましたが、社会のことを学べる場でもありました。

- 会社立上げのきっかけはどんなことでしょうか?

オン・ザ・エッヂ子会社のスペイン法人での仕事とケンブリッジ大学のMBA取得で27~30才までをヨーロッパで過ごしました。その時にヨーロッパの歴史や文化に基づいたクラフトビールに出会い、豊富な種類と味わい、料理やライフスタイルに合わせた多種多様なビール文化に衝撃を受けたことがきっかけです。
またもう一つは、海外の日本食レストランは「特別な日に行く場所」として位置づけられていて、日本の食文化が非常に尊敬されていたこと。この時に、日本から海外に発信するなら「食に関連させた事業」だと着眼しました。また、ケンブリッジ大学卒業生であり「コブラビール」の創業者でもあるKaran Bilimoria氏の存在も大きく影響しました。彼はインド料理に合うビールをどうしても作りたいと「コブラビール」を開発・創業して、苦難を乗り越えて成功を勝ち取った僕のヒーロー的存在。ロースクールを卒業し、会計士の資格を持つ彼が、畑違いの分野で起業をして自社ブランドを確立させたという話を直接聞くことができ、背中を押されました。

- 貴社の商品、クラフトビール「馨和 KAGUA」について教えてください

単に「和食に合う」というだけではなく、和の空間にふさわしい佇まいと、和食を引き立てる馨しいビールを目指しました。日本独特のハーブである「ゆず」と「山椒」を香りづけに使用し、オリジナルレシピを高レベルで商品化させるため、ベルギーの醸造家のところで製造しています。ボトリングから流通プロセスまで、細部にまで一切妥協をせずに造り上げました。小麦を使った淡い色の「Blanc」、ロースト麦を使った赤味かかった「Rouge」の2種類の「馨和 KAGUA」は、ワイングラスでビールの香りを楽しみながら飲んでいただきたい商品です。アートディレクションは建築の分野でも活躍する宮崎晃吉氏にお願いし、「和の空間に映える、温かく存在感のある佇まい」を実現したボトルデザインになりました。ロゴマークの紋印は「確かな品質を約束する」という意味が込められています。

- 日本クラフトビール社の今後の展開としてはどのようにお考えですか?

日本国内の飲食店では、現在300店近い店舗で取り扱っていただき、松屋銀座の和洋酒売場等でも販売をしています。すでに香港・シンガポールの星付きレストランやホテルでも取り扱っていただき、2013年11月にはタイへの進出も決まっており、今後は本場のヨーロッパや北アメリカ市場への参入を目指しています。現在、食のトレンドはニューヨーク発信がほとんどですが、有名なフレンチのレストランでもワサビや醤油などの日本の調味料や食材が当たり前に使われています。フレンチに限らず、日本特有の食材は世界中のレストランでそれぞれ工夫され、受け入れられている。もう日本料理は「板前がつくる料理」という狭いフィールドからは完全に飛び出しています。「馨和 KAGUA」を「和食向け」「日本食に合うビール」という風に限定しないのも、海外での和の文化の広がりと共にありたいからです。
実際、2010年から都内のビアバー・ビアパブの数が徐々に増え始め、愛好家たちがクラフトビールの魅力にハマり始めています。これは日本酒や焼酎ブームの到来の時と非常に似た状態。僕は2013年~14年にかけて日本のクラフトビール市場が大きくブレークすると予測しています。

- これから起業を目指す人たちへのメッセージ

若くして起業しようとすると、ネガティブなことを言われたり、失敗をほのめかされたりすると思います。それは起業後5年間の会社の生存率が20%と言われ、成功例が少ないから仕方がありません。でもその相手を論破して納得させても、自分の事業の成功には直接つながらない。そのエネルギーを、一人でも多くの顧客をつかむ努力に向けた方がいいと思いますね。

- 座右の銘は何かありますか?

「当たり前のことを、当たり前にやる」でしょうか。どうやら我が社の当たり前は、業界の当たり前ではないようで…。例えば、「馨和 KAGUA」誕生までの物語やコンセプトなどをブランドブック風に仕立てたパンフレットを制作し、これを酒屋さんやレストランに渡して、お客様にご紹介いただく時に役立ててもらっています。これがあれば自分たちの気持ちが伝わりやすいと思い、当たり前に作ったものでしたが、クラフトビールの業界では珍しいことのようです。またパッケージにも「麦芽100%」などコマーシャルな情報は全く入っておらず、ビールということさえ書いていない。恐らく普通のビールのパッケージではあり得ない情報量の少なさで、いわゆるビール業界の常識とは外れているのかもしれません。でも、これからも自分たち特有の「当たり前」を大切にし続けたいと思います。

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