“次世代のために、サイエンスを軸とした新しいビジネスの生態系を創りだす”

株式会社リバネス
代表取締役
丸幸弘

インタビュー: 2014/05/09

2002年、大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみで構成された、バイオ教育ベンチャー リバネスを設立。日本初の民間企業による科学実験教室をスタートさせる。2011年、店産店消の植物工場で「グッドデザイン賞2011ビジネスソリューション部門」を受賞。東証マザーズに上場した株式会社ユーグレナの技術顧問や、小学生が創業したケミストリー・クエスト株式会社など、15社以上のベンチャーの立ち上げに携わる。

生年月日:
1978年
出身:
神奈川県
出身校:
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了 博士(農学)

- どんな子ども時代を過ごされていたのですか?

幼稚園から小学校3年生の2学期まで、父の仕事の関係でシンガポールで過ごしていました。まだ物価も安かったので、小学生で毎日タクシーに乗って、お手伝いさんがいて、外食三昧の毎日を過ごしていました。3学期になり、日本に戻ってきてタクシーもお手伝いさんもない暮らしになった時は「うち…破産したのか!?」って思いました(笑)小学校での授業も、シンガポールはディスカッションが多かったのですが、日本では教科書に書いてあることを先生が黒板に書いて、またそれをノートに書き写すというスタイル。それなら教科書を覚えればいいだけじゃないかと思い、ノートは全くとらなかった記憶があります。よく怒られました。

- 御社の業務について教えてください

当社は、私が大学院時代に理工系大学生・大学院生のみで立ち上げた、最先端科学のプラットフォーム型ベンチャー企業です。生物工学研究所、ロボット工学研究所、農業技術研究所、環境生態学研究所、宇宙研究所の5つのラボを自社で運営し、科学技術分野に関する講演やセミナーの開催、科学系出版物の発行、バイオベンチャーの立ち上げにも広く関わっています。なかでも、投資・インキュベーション事業「Tech Planter」では、試作品開発費のサポート体制のもと、スタートアップ企業と支援機関からなるコミュニティを形成し、エントリーチームのすべてを育成対象としてバックアップしています。また、町工場と研究者や企業、自治体をつなぐ事業にも注力し、これまでに約3,500社の町工場に足を運んでネットワークを構築。誰もが試作品開発をしやすい環境を整えています。

- 丸社長が考える、会社の存在意味とは?

会社の存在意義については、生活のため、社員のため、社会貢献のためなど、さまざまな考えがあるでしょうが、私がたどりついたのは「次の世代のため」という想いです。今の子ども達が大人になった時に役に立つテクノロジーや経済システムなどをつくりだし、残しておきたい。そのために今、我々は必死になっています。その1つとして、小学生向けの自然科学教室「ディスカバリーラボ」、ロボット教室「ロボティックスラボ」を運営しています。幼い頃からサイエンスを身近に感じてほしいと願いをこめて。週末に小学生が大勢やってくる会社なんてそうそうないでしょうね。

- 事業計画について、どうお考えですか?

今、自社の会社案内をつくっているんですが、年々事業内容が拡大しているためなかなかまとまらないんです。今年つくっても、きっと来年にはまた別のことも始めているでしょうから。そういう意味で当社では、5年先の事業計画などはつくりません。これだけスピード感のある時代なので今から5年先を考えても、当社も社会の環境も変化しているはずなので意味のないものになってしまうと思うのです。長期的な視点を持ちつつ、今年、来年、何をやるかという視点で迅速に動いています。

- どんな会社を目指していますか?

利益だけを追求するのではなく、考え方が大きい会社を目指したいと思います。考え方の規模を大きくするということは、世界に通用する考え方をもつことにつながり、その結果、グローバルカンパニーに成長できると信じています。利益ばかりを求めて大きくしていくのではなく、考え方が増幅することで結果、規模も大きくなるという道を進んでいきたいのです。また、ある考えが世界規模で広がったものの1つに宗教があるかと思いますが、我々が目指すのはあくまでビジネスとしての考え方の増幅。ですから、アメリカ型の株主資本主義でも、韓国型の国家資本主義でもなく、我々が追求している「公益資本主義」によって次の世代をより豊かにする経済システムをつくりだしていきたいと考えています。実際に当社ではシンガポール、マレーシア、アメリカなどで子会社を立ち上げ、今年は台湾も立ち上げる予定で着々とグローバル化が進行中です。

- 御社の文化についてお聞かせください

当社は、人事も総務も広報もありません。そのため、一人ひとりがその裁量で人を雇い、ブログ等で発信し、研究もセミナー講師も雑誌の制作までもこなしてしまう、そんな会社です。また、私自身が世の中の当たり前を疑い、本当かどうか試してみて、新たな価値を発見するという考えをもっているため、自然と社員も私の言ったことを素直に信じてくれる者は少ないです(笑)そのかわり、疑って、試して、各自が答えを出す。そんな文化が根づいていると思います。サイエンスとは、疑うことから始まるものですから。

- 座右の銘を教えてください

「ゆっくり急げ」ですね。これを聞くと、みんな「うん!?」と一瞬、戸惑うと思います。「ゆっくり急げ」と聞いて、ある人は「じゃ、ゆっくりやってみよう」と思い、ある人は「だったら、もっと急いでみよう」と思うのです。真逆のことを言っているので脳は混乱するかもしれませんが、どう解釈するかはその人のその時の心理状態で変化する、おもしろい言葉だと思っています。また、これはベンチャー企業を表す言葉でもあります。寝る暇を惜しんでも、ベンチャーは猛スピードで進んでいくもの。けれどその反面、ゆっくりやる、じっくりやるという気持ちを忘れてはいいものにたどり着けない。当社の社員からはあの時、「ゆっくり急げ」と言ってもらって良かったという声が多々聞かれます。

- 起業を目指す方へメッセージをお願いします

私自身、たまたまベンチャー企業の代表になっただけなのでおすすめはしないです。会社というのは、つぶれてしまってはおしまいですし…。ただ、反対されたとしても「やりたい!」そう思う人が向いているかと思います。会社はただの箱。そこで何をやるか、どんな人達と一緒にやっていくかが大切だと思います。当社の仕事もとても楽しいですが、ラクとは違います。楽しいし、苦しい。がんばったからって一番になれるという保証もありませんが、それでもやるんだという信念がある人はチャレンジした方がいいでしょうね。