“夢を叶える「最初の一歩」を「場」を通して支え続けたい”

軒先株式会社
代表取締役
西浦明子

インタビュー: 2014/06/13

大学卒業後、ソニー株式会社等での勤務経験を経て、2009年に軒先株式会社を創業。貸しスペースの検索・予約サイト“軒先.com”を中心に、シェア型パーキングサービス“軒先パーキング”、個人間の自転車シェアサービス“軒先シェアサイクル”の運営にも注力している。ベンチャーフェアJapan2009「最優秀賞」を始め、現在までで7つの賞を獲得。

生年月日:
1969年
出身:
神奈川県
出身校:
上智大学

- どんな学生時代を過ごしましたか?

父は会社員で母は専業主婦という、典型的なサラリーマン家庭で育ちました。私自身も、大学を卒業したら大企業に勤める以外の選択肢は殆どないように考えていましたから、まさか自分が起業するなんて当時は想像もしていませんでした。性格も内向的で、人と話したり、大勢の前で発表したりするのがとても苦手。人と競争することも嫌いでした。ただその反面、一番になりたいという野心はありましたね。競争の少ないフィールドを選び、その中で一番を取ろうとする傾向が昔からありました。大学の専攻をポルトガル語にしたのも、英語やフランス語のようなポピュラーな言語ですと、すでに市場が確立していて競争が厳しいだろうなぁと思ったからなんです(笑)

- 大学卒業後は、すぐに就職されたのですね。

大学4年生の夏までポルトガルに留学していましたが、幸い日本はバブル後期の頃でしたから帰国して就職活動1ヶ月くらいで難なくソニーへの就職が決まりました。入社後は中南米のマーケットを担当することになり、チリに駐在して、主に車用のオーディオ製品の販売業務に携わりました。非常にやりがいはありましたが、組織が大きかったため仕事の大半がいわゆる社内調整で、お客様と関わる機会も少なかったんです。それでいくつかの部署を経験したのち別の会社へ移ったんですが、ちょうどその頃に結婚と妊娠のタイミングが重なったため、会社勤めを辞めました。出産後のライフスタイルについて考えた結果、また組織に戻って子育てをしながら仕事を続けることは自分に合っていないと思えたんです。

- そこから、どのようにして現在の会社を立ち上げたのですか?

退職後も自分の身の丈にあった仕事をしていきたいという気持ちはあったので、チリで築いたネットワークや語学を活かして、雑貨の輸入販売をしてみようかなと。最初は漠然と考えていました(笑)まずはテスト販売をしようと思ったんですが、短期で気軽に使えるような物件は不動産屋さんにはないんですよね。それで、都内の商店街でたまに見かけるような、小さなウィークリーショップなら自分でも借りられるかと思って問い合わせたのですが、駅近だったこともあり賃料がものすごく高くて断念…。3坪程の店舗でも、その当時で1週間21万もしたんです。それでもすでに半年先まで予約でいっぱいだと聞いて、短期にすることで家賃が上がるっていうのはとても儲かる商売なんだなと気付きました。しかも、短期で場所を借りたい人は世の中に結構いらっしゃるんだと。そういう視点で街中を見回してみると、それこそショッピングセンターのエスカレーター下のような「あ、使えるかも」という場所は割とある。こういう場所をにわか店舗として使えるようにしたら、私のようにアマチュアとプロの中間くらいの方でも気軽に商売を始められるんじゃないかなと思ったことがきっかけですね。

- 立ち上げ当初のエピソード、聞かせてください。

自分で場所を借り上げるのはリスクが高いので、仲介という立場で始めたらどうだろうと考えたんです。それで、ティザーサイトのような簡単なプロモーションサイトを立ち上げてみたところ、「こんなサービスを待ってました!」というような反応が結構ありまして、これはやはりニーズがあるなと実感しました。そこからはまず、近所の商店街などを回って「定休日などにお店の軒先を貸してください」という風に声を掛けることから始めました。ですから、本格的にサイトをオープンした頃はまだ登録物件が10件もない状態でしたね。

- 軒先.comのサービスは具体的にどのようなものですか?

一言で言うと、使っていない遊休スペースや土地建物を一日単位の短期で使いたい方と貸し出したい方をマッチングさせるサービスです。一番の特徴は、不動産屋さんが扱っていないような物件が豊富という点ですね。軒先という言葉から連想していただけるような、ちょっと雨宿りができる程度の畳一枚程度の広さの所まで幅広く扱っています。貸し主様自らがウェブで登録をしていただけるようになっていて、個人法人も問いません。それを利用者様が見て、申し込みをするという流れです。また当社では、軒先パーキングという事業も展開しています。こちらは、空いている駐車場を臨時で貸し出すというものなんですけど、用途も駐車場のみに限定していまして、今は観光地や大きなイベントホールの周辺で事前に予約をして、駐車場を確保する用途などに使われています。

- ありそうでなかったサービスの先駆けですよね。

最近でこそやっと、場所をシェアするコンセプトを皆さんに知っていただけるようになりましたが、私が始めた2008年当時はまだシェアという文化も少なかったですし、なかなかすぐには浸透しきれませんでした。特に貸し主様を集めるのにとても苦労しまして、皆さん最初はやっぱり自分の家の軒先が空いていたとしても、そこを収益化できるとは思っていませんし、しようとも考えないんですよね。今はメディアで取り上げてくださるようになったこともあり、登録物件数も2500カ所くらいになりましたが、立ち上げから1年ほどは法人依頼もなくて、個人のお店を一軒一軒回ってPRしていくような営業方法を取っていました。

- サービスの上で大切にしている想いはありますか?

バーチャルの世界では、誰でも簡単に自分のお店を開いたり発表するためのサービスがすでにたくさんありますよね。けれど、かつての私のようにいざリアルな場でも展開しようとすると、保証金や内装費などの金銭面でもまだまだハードルは高い。ですから、軒先.comで提供する場所が色んな方の最初の一歩を踏み出す場所になっていけたらなという想いがあります。事実、ユーザー様から喜びの声をいただくたびにその想いは強くなりますね。もうひとつは、当社のサービス自体が社会問題の解決に繋がっているんだということを常に意識しながら仕事をしています。駐車場利用サービスで言えば、迷惑駐車の防止や混雑緩和になったりなど、その土地そのままの状態で活用していただくだけで様々な方の悩みを解決することができます。単純に営利を求めるだけの仕事ではなく、そういった社会問題の解決にも貢献できるのだという気持ちを大切にしています。

- 今後の展開について教えてください。

まず、軒先.comについては今年の夏くらいに“軒先ビジネス”という名前に変更して、サイトリニューアルしようと考えています。現ユーザー様の多くが場所を使ってモノを販売している方や販売促進される方ですので、今後はそういう方々によりフォーカスしたサービスを付加していきたいです。一方で、もっと一般の方々の利用…例えば主婦の方が趣味で制作したアクセサリーを週末に販売したり、学生さんが自分の作品を展示したり、そういったことがもっと気軽にできるような場所作りにも力を入れたいですね。

- 起業したい方へのアドバイスをお願いします。

大それたことは言えないんですが、具体的な夢とそれを叶えるために必要な課題をひとつひとつクリアしていくことができれば、結果的に起業へ繋がると考えています。私自身も38歳で出産してすぐの起業でしたが、子供を育てながらもここまでやってこれましたので。まず、行動に移してみる。それが一番大切ですね。

- 座右の銘があれば教えてください。

“日常を、非日常的に生きる”というのを座右の銘にしています。これは、チリで暮らしていた頃にある友人からスペイン語で聞いた言葉です。それを日本語にして座右の銘にしています。当社サービスもそうなんですが、当たり前と思っていたものを視点を変えて捉え直してみると、新しい価値が見えてくる。軒先みたいな場所って、使わない人にはなんの価値もないものですけど、商売されたい人にとっては素晴らしいチャンスになります。日々の生活のちょっとしたことでも、意識を変えればとても幸せに思えることはたくさんあると思います。

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